2008年6月26日(木)「しんぶん赤旗」
淀川水系4ダム建設・再開発
国の「見切り発車」に批判
改正河川法の趣旨に反する
国土交通省近畿地方整備局が二十日に淀川水系の四ダム建設・再開発を盛り込んだ淀川水系河川整備計画案を公表したことに、厳しい批判が上がっています。
計画は、琵琶湖・淀川水系の大戸川ダム(大津市)、川上ダム(三重県伊賀市)、丹生ダム(滋賀県余呉町)の建設と、天ケ瀬ダム(京都府宇治市)の再開発を盛り込んでいます。
近畿地方整備局の諮問機関である淀川水系流域委員会の意見や審議継続中であることを無視し「見切り発車」しました。
住民の意見をないがしろに
同委員会は「整備局の説明は不十分」「ダム建設は不適切」とする中間意見書を四月に提出、さらに審議を継続していました。
同委員会の宮本博司委員長は「委員会の意見書および申し入れを無視したものであり、誠に遺憾であります。河川法の趣旨を生かさずに、かたくなに事業を実施しようとする整備局の姿勢に対して強く抗議します」との声明を発表しました。
マスコミ各紙も異例の事態と批判しています。
「(委員会の)意見を事実上無視したことで、公共事業への不信が深まるのは必至だ」「住民意見をないがしろにしたことは、長い目で見れば国土整備に大きなダメージとなりかねない」(京都新聞二十一日付)
「(知事には)国側の“独断専行”を安易に受け入れず、住民代表としての判断を求めたい」(読売新聞二十日付)
滋賀県の嘉田由紀子知事は、「知事からの質問に回答もないまま、計画案が出たことは大変遺憾。効果が薄いとされるダムを現時点で計画に入れることは大きな疑問」と不快感を示しています。
国交省の暴挙 穀田議員追及
この問題では今月十一日、衆院国土交通委員会で、日本共産党の穀田恵二議員が「審議打ち切りなどとんでもない」と国土交通省の姿勢を批判していました。
「(流域委員会から)十分なご意見をいただいた」と答えた冬柴国土交通相に、穀田氏は「自らお願いした委員が一生懸命議論しているのに打ち切る、何のための委員会か」「大臣は九七年の改正河川法の趣旨をわかっていない」と指摘しました。
改正河川法は、計画決定段階における住民参加、有識者をふくむ住民合意を手続きとして位置づけ、それまでの建設省など行政だけで計画をつくり、有識者や住民などに押し付けるやり方を改めました。「行政も有識者や住民など国民と一緒になって河川整備の計画をつくることになった」(穀田氏)のです。
改正当時の建設省河川局長だった尾田栄章(ひであき)氏は「関係住民を含めて皆で議論して整備計画をまとめるのが改正河川法の趣旨だ。場合によっては、基本方針にさかのぼって見直すこともあり得る」と述べています。
穀田氏は、こうした経緯を紹介し「住民らの意見で、行政のダム案がまとまらなかったならば、別の代替案を考える、ということだ」と指摘しました。
今回の「見切り発車」について穀田氏は「こういう経過のもとでできた流域委員会の意見すら無視することは、改正河川法の趣旨を国交省自らが踏みにじる暴挙だ」と厳しく批判しています。(日本共産党国会議員団事務局 永野保司)