2008年6月25日(水)「しんぶん赤旗」

主張

首相の消費税発言

国民に説明できぬ増税断念を


 消費税増税について、つい先日(十七日)、「決断しなければいけないとても大事な時期だ」と明言した福田康夫首相が、今度は「二、三年とか長い単位でもって考えた」と言い直してきました(二十三日)。もちろん消費税増税も今年度中の「決断」も否定したわけではありません。押したり引いたりしながら増税を実現していく根本的な狙いは明らかです。

 重大なのは首相自身、世論の反応を見ながら言い方を変えなければならないほど、消費税増税は国民に望まれていないことです。国民にどれだけ税を負担してもらうかは民主主義の要であり、国民に説明のできない増税はキッパリ断念すべきです。

「決断の時」発言は重い

 福田首相が先日、外国の通信社代表を相手に、消費税増税は「決断の時だ」と発言したのは、およそ「決断」などの言葉とは縁遠かった首相が、消費税増税についてははっきりした意思を示したものとして、驚きをもってうけとめられました。

 首相は二十三日の記者会見では、「外国の通信社が相手だったから」「(国内向けなら)もう少し厳密な言い方もあった」などと言い逃れましたが相手が外国だからというのは失礼な話です。通信社には日本の共同通信も含まれており言い逃れは通用しません。

 政府はいま、今年秋には消費税増税をふくむ抜本的な税制改革についての検討をまとめ、早ければ来年の通常国会にも増税法案を提出しようとしています。「決断の時」という発言が、消費税増税への腹を固めたと受け取られたのは当然です。

 実際、言い直した首相の発言も、歳出改革や景気の動向を見ながら「総合的に考える」というだけで増税をしないとは一言もありません。翌二十四日の閣僚懇談会では、「決断の時」という報道も「二、三年で」というのも「どちらも極端な表現だ」といっています。これでは首相の狙いは変わらないが、報道したマスメディアが悪いというのでしょうか。

 最近の世論調査では、社会保障費の財源確保のためでも、消費税増税に「反対」は51%で、「賛成」はわずか22%です(NHK調査)。首相が発言をくるくる変えるのも世論が無視できないからです。首相の「決断の時」という発言が、簡単に国民に受け入れられないのは明白です。

 だいたい消費税は、収入の少ない人ほど負担が重い、逆進性の大きな悪税です。行政のムダを省くなどの当たり前のことをやったからといって、増税が許されるものではありません。国民の批判に向き合わず、まともな説明もしないで、消費税増税を押し通すことしか念頭にないというのでは、とても民主的な態度とはいえません。

 消費税は、導入のときも増税のときも国民の意思を無視して行われました。消費税の前身、「売上税」を導入しようとした中曽根康弘元首相は、「私の顔がうそつきに見えるか」と開き直りました。増税の狙いを隠し、その場の言い逃れを重ねるなら、福田首相もそうした批判を免れることはできません。

世論で追い込む好機

 歴代政府が消費税を社会保障の安定した財源のためなどと偽ってきたごまかしはいまや明白です。消費税は上げても、医療も年金も切り縮められてきたのが国民の常識です。

 福田首相は「世論がどう反応するか、いま一生懸命考えている」といいました。この言葉だけは真実です。国民に説明できない増税を首相が断念しないなら、国民の世論と運動で断念に追い込む反撃の好機です。



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