2008年6月24日(火)「しんぶん赤旗」

主張

最低賃金

大幅引き上げへの絶好の機会


 政府と労使代表で構成する「成長力底上げ戦略推進円卓会議」が先週末、地域別に決めている最低賃金(最賃、全国平均=時給六百八十七円)を二〇一二年度までの今後五年間で、小規模事業所の「高卒初任給の最も低い水準」を目安に引き上げることで合意しました。

 貧困と格差が拡大するなかで、最賃の引き上げは重大な社会問題となっており、〇七年十一月には、生活保護基準を下回ってはならないとする改定最賃法が成立し、今年七月から施行されます。すべての労働団体が要求している時給千円の実現へのチャンスにしていくことが求められます。

生計費を決定基準に

 日本の最賃は極めて低く、最も低い秋田と沖縄の両県は時給六百十八円、最も高い東京都でも七百三十九円です。昨年の国会で日本共産党の志位和夫委員長が抜本的な改正を要求したことなどがきっかけになり、国会内外での運動が大きく広がり、昨年十一月にようやく法改正に至りました。

 改定最賃法は、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」(第九条三項)と明記しました。労働者が要求した時給千円以上は明確になりませんでしたが、最賃の大幅引き上げと全国一律最賃制の確立への一歩につながるものです。

 最低賃金は、もともと生活できる賃金である生計費を基準に決定するのが当然です。ワーキングプア(働く貧困層)をなくすためにも、最賃の大幅な引き上げによる、各企業・産業の低い賃金の底上げが避けられません。

 労働者と労働組合は所属や立場の違いを超え、「時給千円」以上を掲げて共同行動を繰り広げてきました。長い間、年間数円アップにとどまっていた最賃が、昨年は前年度の三倍、全国平均十四円という二けた増を実現したのは、共同行動と世論の共感があったからでした。

 今回の円卓会議では小規模事業所の規模については合意に至らず、具体的な引き上げ額も明示されませんでしたが、〇七年の高卒初任給の最低水準、時給七百五十五円を当てはめても六十八円アップとなります。

 財界側は円卓会議で、対象となる小規模事業所について、より賃金が低い「従業員二十人以下」に固執し、当初の政府案「十―九十九人」さえ拒みました。取引単価切り下げなどで中小企業を苦境に追い込みながら、「中小企業に打撃だ」などと最賃引き上げをできるだけ小幅に抑え込もうという財界・大企業の身勝手さを許すわけにはいきません。

 極端な低賃金とそれによる内需低迷が、中小企業の経営を圧迫している大きな要因です。財界と政府が「中小企業いじめ」をやめ、最賃を引き上げてこそ、中小企業を含めた国民経済の健全な発展をもたらします。

時給千円以上は急務

 円卓会議の方針を受けて中央最低賃金審議会が論議を始め、今月末には目安となる答申をまとめます。

 日本共産党は国会議員団が昨年十月に発表した最賃制改善の「要求」のなかでも全国一律最賃制の確立を基本として、当面時給千円以上を目標に抜本的な引き上げと、中小企業対策の強化など基本的な考えを示しています。

 改定最賃法の精神や円卓会議の合意を生かして、時給千円以上の実現めざし共同行動をさらに強めることが求められます。



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