2008年6月20日(金)「しんぶん赤旗」

主張

社会保障国民会議

元凶は抑制路線と消費税頼み


 福田内閣が設置した社会保障国民会議が中間報告を発表しました。

 社会保障のあらゆる分野で、切実に支援を必要としている人が制度から排除される福祉の破壊がますます深刻になっています。

 ところが中間報告は、「社会保障制度の構造改革が進み、経済財政との整合性、社会保障制度の持続可能性は高まった」と、社会保障の「抑制路線」をほめたたえています。

「構造改革」そのものに

 小泉「改革」は「はじめに抑制ありき」で給付を減らし負担を増やす文字通り制度改悪の連続でした。

 年金では、保険料を毎年値上げして給付水準を引き下げる仕組みを導入したうえ、無責任な運営で発生させた「消えた年金」の解決は遅々として進んでいません。

 介護では「保険あって介護なし」の矛盾が広がり、医療は中間報告でさえ「医療崩壊」と表現するほど深刻です。とりわけ「後期高齢者医療制度」は、七十五歳という年齢で高齢者を別枠の制度に囲い込み、負担増と差別医療を強いる世界に例のない非人間的な仕組みです。

 政府も社会保障の惨状をある程度認めざるを得なくなっています。その責任が問われているにもかかわらず、中間報告は社会保障の問題は「構造改革」が「十分対応できなかった問題」「改革の過程で新たに生じた問題」と片付けました。改革が十分ではなかった、改革は良かったが問題が派生したというのは責任回避の言い逃れにほかなりません。

 国民のいのちと暮らしを守る社会保障を掘り崩してきたのは、小泉内閣以来の「構造改革」そのものです。加えて労働者派遣法の規制緩和が非正規雇用をまん延させ、「大企業・大資産家に減税、庶民・高齢者に増税」の逆立ちした税制が暮らしの困難に拍車をかけました。

 中間報告は今後の「基本方向」として、これまでの路線を引き継ぐと同時に、「『社会保障の機能強化』に重点を置いた改革を進めていくことが必要」だとのべています。

 “改革が足りなかった”“改革から派生した”と言い逃れる姿勢から出てくるのは、いっそうの「構造改革」とパッチワークのような部分的、一時的「修正」にすぎません。

 国民会議の座長を務めているのは小泉内閣で経済財政諮問会議のメンバーだった吉川洋・東大教授です。吉川座長は国民会議の医療・介護・福祉分科会で、公的保険の「範囲をどのようにするのか議論しなければいけない」と発言しています。同分科会の報告は、保険給付の範囲と公私の役割分担の検討、「軽い」治療を保険外にする「保険免責制」の議論を深めるとのべています。

 公的保険を制限し民間保険に委ねることは、貧富の格差が治療の格差に直結する、荒廃しきったアメリカ型の医療制度への道です。

行き過ぎた減税の是正

 こんな社会保障の改悪を盛り込みながら、国民に負担増を求められてはたまりません。

 福田康夫首相は消費税増税について「決断しないといけない」時期だと発言しました。どんなに貧困でも、毎日の生活費に課税する消費税は、弱者を社会的に支える社会保障の目的に反する福祉破壊税です。

 必要な財源は道路特定財源や軍事費のムダにメスを入れ、十年間で七兆円という大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正して生み出すべきです。必要なのは社会保障「抑制」路線を根本から転換し、逆立ちした税制を改めることです。



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