2008年6月19日(木)「しんぶん赤旗」
在日米海軍
まんがで原子力空母PR
横須賀 若者の取り込み図る
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在日米海軍司令部が、横須賀基地(神奈川県横須賀市)に八月にも配備予定の原子力空母「ジョージ・ワシントン(GW)」=CVN73=のPR作戦に乗り出していることが十八日までにわかりました。宣伝物は同司令部が作製したまんが本「MANGA CVN73 USS George Washington」。市民からは「市民の不安に向き合っていない」などの反発の声があがっています。米海軍は二十二日の基地一般開放で大量に配布する予定です。
まんがはB6判二百ページ。約一千万円をかけて三万部を作製。主人公の日系米兵の三等兵曹が、横須賀に向けて航海中の原子力空母ジョージ・ワシントンでの艦内生活を通じて軍人として成長するストーリー。
在日米海軍司令部は、「まんがは二年前に計画し、原子力空母への横須賀市民の関心や不安の声に応え、幅広い市民、とくに若い人たちに理解してもらえるものとして日本人に人気のあるアニメ、まんががよいと考えた」(同報道部)と十代の若者を対象に作製、発行したとしています。
二年前の二〇〇六年は原子力空母の横須賀母港化の日米合意に対して横須賀市民が「横須賀のことは市民が決める」と住民投票条例を求める直接請求署名運動をスタートさせた時期です。
住民投票条例制定運動に取り組んだ呉東正彦弁護士は「まんがは、市民が不安に感じている原子力空母の安全性や米軍犯罪についてきちんと向き合うこともない、米軍の一人よがりの内容だ」と指摘します。
解説
危険性・米兵犯罪にふれず
「市民にジョージ・ワシントンを理解してもらいたい」。在日米海軍司令部関係者はまんが本を作製した動機をこう語りました。まんがの内容は空母の機能や構造は確かにわかりやすく描かれています。
しかし市民の最大の関心事である原子力空母の危険性(安全性)や米兵犯罪については一言もありません。あるのは「ニミッツ級原子力空母6番艦として建造され一九九二年七月四日に就役した」の文字だけ。
ジェームズDケリー司令官(少将)は「発刊にあたって」で「同艦の熟練した乗組員達は米国の親善大使であり、皆様の未来の隣人、そして多くの市民にとって良き友人となるでしょう」と強調します。
しかし、この間、横須賀市では米兵によって二人の市民が惨殺されるなど米兵犯罪が多発。同空母が米国を出港直後に艦内火災を起こした情報も横須賀市民にはまったく提供されていません。
同司令官はまた、同空母の横須賀配備について「日米同盟の素晴らしい協力関係を世界に示すもの」と強調します。まんがも「日常的に世界に前方展開する」としていますが、前方展開先で何をしたのかは描かれていません。同空母はイラク西部ファルージャでの住民虐殺作戦に参戦するなど過去十五年間で、海外での大規模作戦への参加回数は米空母のなかでもトップの七回です。
まんがは大阪書籍が受注、担当したのは防衛省の「まんがで読む防衛白書(18年版)」を執筆した漫画家です。原子力空母配備をめぐっては日本の外務省も米軍受け売りの「安全性パンフ」を大量配布しましたが、そのときの部数も三万部。なにやら原子力空母押し付けの「日米共同作戦」が見え隠れします。(山本眞直)
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