2008年6月19日(木)「しんぶん赤旗」
消費税増税
福田首相トンデモ発言
財政赤字 誰が作った
“高齢化で財政赤字を招いたから消費税増税”―。福田康夫首相は、社会保障を財政赤字の元凶だとし、消費税増税が避けられないかのように描き出そうとしています。事実をねじまげたとんでもない暴論です。借金の原因をちゃんと見れば、消費税増税に頼らない道筋が見えてきます。(山田英明)
元凶は大型公共事業
国と地方の借金(長期債務残高)は、一九九〇年代に急激に膨張しました。
十年間の積み増し額は約三百兆円。財務省のパンフレットも「公共事業関係費の増加が主要因」と指摘するほどです。
借金膨張の最大の要因は、アメリカに追従する自民党政治による大型公共事業優先の政治が招いたものです。
「日米構造協議」の最終報告(九〇年六月二十八日)は、「総額四百三十兆円の公共投資基本計画(十カ年)の実施」を提起。その後、この計画は、九五年度から十三年間に六百三十兆円と増額改定されました。
この「計画」が“縛り”となり、自民党政権は、宮沢内閣の「緊急経済対策」を皮きりに、二〇〇〇年まで相次いで、大型公共事業中心の「経済対策」を実施してきました。これが国と地方の借金を急膨張させてきたのです。
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5兆円の軍事費維持
アメリカ追随のもとで異常な規模に膨れ上がった軍事費も、国民生活や経済を支える予算を圧迫しています。
日本の軍事費は九〇年代前半に急激に増加。その後、五兆円規模の軍事費を毎年、維持し続けています。憲法で「戦力の不保持」を定めている国としては異常な規模となっています。
七八年度から始まった在日米軍への「思いやり予算」は〇八年度予算でも二千八十三億円。この間の累計では五兆円を大幅に超えました。
政府は「日米同盟強化」の名のもとで、イージス艦(一隻約千四百億円)やヘリ空母(同約一千億円)など「他国を攻撃できる能力をもつ兵器」の増強を進めています。
この上さらに、米軍のグアム移転や国内での基地再編のために三兆円もの税金が投入されようとしています。
大企業減税で空洞化
歳入面でみると、税収の空洞化を招いたのは、ゆきすぎた大企業減税です。
法人企業統計調査(財務省)によると、大企業(資本金十億円以上)の税負担は、九〇年代と比べても横ばい。同じ期間に、経常利益が急激に増加してきたのとは対照的です。
自民・公明政権は、研究開発減税やIT(情報技術)投資減税など、大企業のためにあれやこれやの減税策を講じてきました。その結果、大企業がバブル期を超える空前の利益を上げているにも関わらず、法人税収は低迷してきました。
同時に、国際的に見ても、日本の主要大企業の税と社会保険料負担は、先進国の中でも低レベルに抑えられています。
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貧弱な社会保障給付
ヨーロッパでは、社会保障が予算の中心になるのが当たり前です。ところが、日本では、抑制が続いています。
社会保障関係費は高齢化によって、当然、必要額は毎年増加します。その自然増分を毎年毎年二千二百億円(〇二年度は三千億円)抑制してきたのが、この間の自公政権でした。
消費税導入以降、社会保障は改悪の一途をたどっています。
小泉内閣以来の「社会保障費抑制路線」によって、医療、年金、介護、生活保護が毎年のように改悪されてきました。
政府の社会保障国民会議に吉川洋座長(東京大学教授)が提出した資料でも、日本の社会保障給付がヨーロッパ諸国と比べて依然、低水準なことが分かります。
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聖域ただす抜本改革を
国と地方の多額の借金膨張の原因を見れば、財政再建の方向は明らかです。
ムダと浪費を生み出す大型公共事業を見直すことが必要です。十年間も高速道路ネットワークを整備し続ける道路中期計画などはまず見直すべきです。
その上で、大企業優遇税制と軍事費という二つの聖域を見直すべきです。大企業の法人税率(現行30%)をせめてバブル期(九〇年度)の37・5%に戻すだけでも、約四兆円の増収が見込まれます。さらに、研究開発減税などを廃止・縮小すれば、一兆から二兆円の税収を確保することができます。
こうした国民本意の税制の抜本改革で、消費税増税に頼ることなく、社会保障をさらに充実させる展望が開けます。
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