2008年6月18日(水)「しんぶん赤旗」

振り込め詐欺 最悪ペース

考える余裕与えず

年金「還付」語って


 振り込め詐欺の被害が過去最悪のペースで増えています。犯行の手口や被害の実態をみてみました。


 振り込め詐欺被害についての警察庁の集計によると、被害額が過去最多だったのは、二〇〇四年の約二百八十四億円です。〇五年から〇七年は二百五十億円台でした。ところが今年は一―四月の合計が約百十二億円に上っており、このまま推移すると〇四年を上回り最悪の被害になるおそれがあります。

 被害件数、被害額ともに最も多いのは、身内の窮地を装うなどして援助を求める、いわゆる「オレオレ詐欺」です。今年四月分の被害額でみても約十九億円と全体(約三十三億円)の半分以上を占めています。

巧妙化する手口

 オレオレ詐欺の手口は最近ますます巧妙に。事前に身内を名乗り「携帯電話の番号が変わった」などと連絡しておき、電話番号を控えさせ、詐欺の「本番」のときに相手の警戒心を解くやり方が増えています。

 オレオレ詐欺は「警察官」や「弁護士」など複数の人物を登場させ、もっともらしく詐欺話を展開します。

 「冷静さには自信があった私がひっかかるとは思わなかった」。オレオレ詐欺で百万円の被害にあった東京都内在住の女性は、こう悔しがります。女性は「娘の運転する車が暴力団幹部の高級車と交通事故を起こして脅されている」という設定の詐欺にだまされました。

 「電話口から『助けて』という娘役の若い女性の声がして、直後に暴力団役の男が出てきて『示談金をすぐに振り込め』と脅された。次々と電話の相手が変わるので冷静に考える余裕がありませんでした」

力入れる暴力団

 最近とくに急増しているのは「還付金詐欺」です。その手口はこうです。

 ▽社会保険事務所などを装って「年金の未払い分が判明したので還付します」などと被害者に電話する▽還付金の支払いには現金自動預払機(ATM)を使うとして、被害者をATM前まで行かせる▽携帯電話でATMの操作方法を話しながら、言葉巧みに現金を振り込ませる。

 還付金詐欺の被害者は高齢者が多いのが特徴です。高齢者は、ATM操作が苦手な傾向があることを狙った犯罪です。

 振り込め詐欺の被害増加の事態を受け、警察庁は十一日、「振り込め詐欺対策室」を設置。摘発強化と同時に被害の拡大防止に力を入れます。金融機関と総務省には、ATM周辺を妨害電波で携帯電話を不通とする対策などを求めるとしています。

 振り込め詐欺に詳しいジャーナリストは、被害が増えている背景をこう指摘します。

 「ヤミ金への摘発が厳しくなったので、暴力団やその周辺が新たな資金源として振り込め詐欺に力を入れている。警察をはじめ行政機関をあげて防止策に取り組まないと、被害は減らない」

グラフ

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp