2008年6月18日(水)「しんぶん赤旗」
社会保障国民会議
あす中間報告
行き詰まる抑制路線
政府の社会保障国民会議(座長・吉川洋東京大学教授)は十九日にも中間報告をまとめ、福田康夫首相に提出する予定です。何を盛り込もうとしているのか。十二日に示された報告骨子からみてみました。
「今日までの一連の制度改革は一定の成果を達成」。骨子では、小泉政権以来の社会保障制度の連続改悪を“誇る”言葉で始まっています。
二〇〇一年の医療改悪(サラリーマン本人窓口三割負担など)、〇四年の年金改悪、〇五年の介護制度改悪、後期高齢者医療制度の導入など「国民に痛み」を強いてきた制度改悪を具体的に列挙。「これら一連の改革により…経済財政との整合性、社会保障制度の持続可能性はかなり高まっていることは評価されるべき」だと正当化しました。
一方で、「改革の過程で新たに生じた問題」として、医師不足、医療崩壊、福祉分野での人材難、少子化対策の遅れなどにも触れざるを得ませんでした。雇用問題では、「労働市場の二極化・格差の固定化が進み…社会保障制度の網の目からもれてしまう層が増大している、との批判」があることにも言及しました。これは、小泉「構造改革」路線の行き詰まりを事実上認めざるをえなくなったものです。
しかし、抑制路線を転換することを明示する表現はありません。「『社会保障の機能強化=必要なサービスを保障し国民生活の安定を確保する機能強化』に重点を置いた改革を進めていく」という一般的な表現にとどまりました。
それどころか、「制度の効率化への不断の努力を継続」と明記。「構造改革」路線を続ける方向も示唆しました。
社会保障制度を危機に陥れている大本にあるのは、社会保障費を毎年二千二百億円抑制する「骨太方針」です。この抑制路線を撤廃することなしには、「社会保障の機能強化」を実行することも不可能です。しかし、国民会議を設置した福田首相は、「二千二百億円抑制方針」を今後も堅持する構えを崩していません。
負担増 地ならし
一方で、骨子は「社会保障はあなたが支える」として、国民の責任を強調します。「給付の裏側には必ず負担がある。国民にはサービスを利用する権利と同時に制度を支える責任がある」とわざわざ念を押しています。
直接的な言葉はありませんが、「速やかに負担についての国民合意を形成し、社会保障制度に対する国・地方を通じた必要な財源の確保を図るべき」だとして、国民負担増を求める方向をにじませました。
同会議の「雇用・年金分科会」は先月十九日、基礎年金財源を「全額税方式」にした場合、消費税率が9・5―18%に引き上がるとの試算を公表。消費税増税の議論を加速させる役割を果たしています。
もともと同会議は、福田首相が野党にも参加を呼びかけて、消費税増税への「地ならし」の土俵にすることを狙ったものです。しかし、野党は参加を拒否。首相の思惑が外れたままの発足(今年一月)となった経過もあり、国民が警戒する負担増路線をストレートに打ち出しにくい側面を抱えています。
同会議は、中間報告をまとめた後、九月の最終報告作成に向けて、負担のあり方について本格的に検討するとしています。(宮沢毅)
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