2008年6月16日(月)「しんぶん赤旗」
消費税 論議加速
社会保障財源を口実に
自民財革研 「不退転の決意」
自民党は今月下旬にも税制調査会(会長・津島雄二元厚相)の総会を開き、二〇〇九年度税制改革に向けた議論を本格化させます。焦点は消費税増税問題。「社会保障費の自然増をこれ以上削減するのは限界」「安定した社会保障財源を」との言い分で、自ら推進してきた社会保障切り捨ての責任を不問にし、消費税増税論議に流し込む戦略です。
自民党内では、税制調査会に先立ち、増税論者の与謝野馨前官房長官が会長を務める財政改革研究会(財革研)が「二〇一〇年代半ばまでに消費税を少なくとも10%程度まで引き上げる」とする提言をまとめ、福田康夫首相に申し入れました。政府の経済財政諮問会議が今月下旬に決める経済財政運営の基本方針「骨太の方針2008」や、政府・与党の税制論議に反映させるためです。
提言は「社会保障制度を堅持するための安定財源を確保すべく、税制の抜本改革に不退転の決意で取り組む」と、かつてない表現で消費税増税を迫っています。与謝野氏は「七月ぐらいになったら一度自民党の関係者全員が集まって、どうするのか相談を始める」(五日の講演)と党を挙げて推進する立場を示しています。
今後の社会保障の給付と負担などを議論している政府の社会保障国民会議の結論がまとまっていないこともあり、福田首相は財革研の提言内容に「今後の経済情勢も見極めないといけない」と“慎重”姿勢をみせています。しかし、額賀福志郎財務相は十三日の記者会見で提言内容を「きわめて大事な政治課題」と積極的に評価。「税制抜本改革では、消費税率の引き上げをはじめ、法人税や所得税などを総合的に議論して、当面やることと中長期的に取り組むことを国民に示すことが政治家や政府の役割だ。そういうことに真正面から取り組むべきだ」と述べ、消費税増税を正面から議論する考えを示しました。
自民党内では、中川秀直元幹事長など「構造改革」路線の継承を掲げるグループがあります。小泉「改革」路線をいっそう進め、国民には痛みを押し付ける一方、大企業には優遇政策を進めて“経済成長”をはかろうという立場です。
同じグループの中堅・若手議員らは「消費税より、税金の無駄遣いに徹底的にメスを」と主張していますが、「将来的に消費税税率を引き上げる必要性は否定しない。消費税を福祉の財源に充てることのメリットも理解」とする提言をまとめ、福田首相に申し入れています。減税に次ぐ減税でもうけをあげる大企業ではなく、国民に負担をかぶせる発想では自民党内に違いはありません。
NHKの世論調査(六―八日実施)では、〇九年度税制改革で社会保障財源確保のための消費税率引き上げに「賛成」は22%。これに対し「反対」は51%にのぼっています。「社会保障財源」を消費税増税の口実にしても、国民との矛盾は避けられません。
民主幹事長 「議論避けられない」
民主党の鳩山由紀夫幹事長は十五日のNHK番組で、後期高齢者医療制度に代わる同党の対案として公費増額を掲げていることに関して、「増税の議論はいつかは避けられないと思っている。しかし、その前に徹底的に歳出の削減に努めることを国民に現実の姿として映し出さなければならない」と述べ、将来的に消費税増税を求めていく立場を示しました。
鳩山氏は「高齢者にはこれ以上の負担はさせられない。現役世代の保険料負担には限界がある。一方で、医療費が抑制されている。何らかの形で財源を見いだすとなれば、当然、税の部分であることは間違いない」と指摘。ただ次期衆院選では「無駄遣いをなくす方向でいく」と述べ、消費税率5%の現状維持という方針は変えない考えを示しました。
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