2008年6月15日(日)「しんぶん赤旗」
焦点 論点
日米「密約」
安保交渉記録を公表すべきだ
日米両政府が一九六〇年に日米安保条約を改定したさい取り交わした「密約」が次々にあきらかになっていますが、こんどは、朝鮮有事の「戦闘作戦密約」が発覚しました。(『文芸春秋』七月号、「しんぶん赤旗」五日付参照)
「密約」は、安保条約の実態のなかで生きています。アメリカの情報公開法にもとづいて入手した「密約」文書を示されても「知らぬ、存ぜぬ」をきめこむ政府の態度を許しては、日本の平和も安全も守れません。
米軍の作戦を保障
これまでの「密約」は、核持ち込み、戦闘作戦行動、米軍地位協定の運用など、安保条約の根幹にかかわる諸分野におよんでいます。
核持ち込みでは、二〇〇〇年に日本共産党の不破哲三委員長(当時)が、米情報公開法にもとづいて入手した「討論記録」という形式の「密約」があります。一九六〇年一月六日に藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日大使が署名しています。
核兵器を日本領土に持ち込むことや核基地建設は事前協議の対象にするが、核兵器積載艦船の寄港や核兵器搭載機の飛来は「現行の手続きに影響を与えるものとは解されない」というものです。旧安保条約下でおこなっていた核寄港・飛来をそのまま認める合意です。
三年後の国会で池田勇人首相が「核弾頭を持った船は、日本に寄港はしてもらわない」(六三年)と答弁するや、アメリカ政府は「密約」を大平外相に説明し、池田首相らの答弁が「密約」に反することを悟らせました。また、沖縄返還(七二年)のさいに「核持ち込み密約」を取り交わしたのも六〇年「密約」が厳然と生きているからです。
今回明らかになった「密約」は、春名幹男名大教授が入手した戦闘作戦に関するものです。藤山外相とマッカーサー大使が六〇年六月二十三日に署名したもので、「密約」文書そのものが発覚したのははじめてです。藤山外相は、朝鮮有事のさい、在日米軍が朝鮮で戦闘作戦をするために「日本における施設および区域を使用してもよい」と言明しています。制限なしの事前同意でありきわめて重大です。六九年に当時の佐藤栄作首相が、朝鮮出撃のさいの事前協議に「前向き、かつすみやかに態度を決する」とのべたのもこの「密約」があるからです。
朝鮮半島の出来事は日本の平和と安全に直結します。日本の自主的決定を放棄し、軍事優先で動くアメリカに日本の運命を預ける「密約」が許されるはずはありません。
「核密約」も「戦闘作戦密約」も政府の国民への説明と違います。
事前協議制度について政府は、「国民が知らないうちに核兵器が持ち込まれたりすることがないように」「日本がその意に反して戦争に巻き込まれないように」するためだと説明してきました。しかし、「密約」は、国会も国民もまったく知らない間に、核兵器を持ち込ませ、戦闘作戦行動を認めることによって日本を戦争にまきこむものでしかありません。
国民の反核・反戦の願いにそうふりをしながら、裏で「密約」を結ぶのは国民に対する裏切りです。きびしい追及が必要です。
主権侵害許さない
「密約」は、政府が事態に則して検討し決定する道も、憲法で「国権の最高機関」と明記されている国会の決定権もはじめから排除しています。主権侵害の「密約」は認められません。日米安保交渉の全記録を公表させることが不可欠です。
憲法とそのもとで日本国民がつちかってきた平和原則に違反する「密約」の廃棄は当然です。 論説委員会 山崎静雄