2008年6月15日(日)「しんぶん赤旗」

主 張

東北の地震

支援に万全の策を


 昨年の能登半島(石川)や新潟・中越沖の地震の記憶もまださめやらぬなか、岩手・宮城の県境部でマグニチュード7・2、震度6強の大きな地震が発生しました。

 亡くなられた方、ケガをされた方、住宅などの被害にあわれた方に心からお見舞い申し上げるとともに、政府や自治体が被災者の救援と支援に万全の策をとるよう求めます。

 震源となった岩手・宮城の内陸部は、過去には大きな地震もあったものの、地震の切迫を示す活断層は見つかっておらず、近い将来に大地震が発生する可能性は低いとみられていました。しかし、全体として地震の「活動期」に入ったとされている日本列島では、昨年の能登半島同様、いつどこで大地震が起きるか分からないのが実態です。

 大地震はどこでも起きることを前提に、不意打ちにいつも備えて、災害に強いまちづくり、国土づくりをすすめ、被災者への万全の支援体制を整えることが必要です。

 今回の地震では、昨年の中越沖地震のように、原子力施設への大きな被害は見られませんでした。しかし原発の耐震安全性には重大な疑問が生じています。対策の見直し・強化は欠かすことができません。


南米統合

自主的協力の新段階へ

 南米の全十二カ国が参加する南米諸国連合(UNASUR)が五月下旬に設立されました。中米・カリブ海諸国にも開かれ、中南米全域にわたる統合を視野に入れています。

 ベネズエラで一九九九年にチャベス政権が誕生して以来、波打つように中南米各国に広がった進歩的な政治変革は、平和と社会発展をめざす自主的な地域共同へと発展してきました。南部共同市場(メルコスル)とアンデス共同体などを通じた共同の取り組みが南米全域の恒常的な機構として結実したことは、同地域の発展の新段階を画すものです。

 設立条約は、貧困一掃と格差克服、持続的成長などを掲げ、社会保障や保健、教育、地域横断インフラ、地球温暖化への取り組み、中小企業育成、金融統合など、経済・社会面での多面的な共同をめざしています。

 中南米にとって八〇年代は「失われた十年」、九〇年代は「絶望の十年」と呼ばれ、経済・金融危機下で貧困が拡大しました。むき出しの市場原理にもとづく新自由主義が、米国の主導する国際通貨基金(IMF)や世界銀行を通じて押し付けられたことが、その大きな要因でした。条約は貧困とたたかううえで自主的、民主的な経済運営と域内の共同が重要だとの認識にたつものです。

 政治・安全保障面では、条約は核兵器や大量破壊兵器のない「多極的で均衡のとれた公正な世界」の実現をめざすと表明しています。主権の尊重と民族自決、民主主義と人権の尊重などを共通理念とし、対話による問題の解決を強調しています。

 中南米はかつて「米国の裏庭」と呼ばれました。米国はいまも干渉政策を捨てず、キューバへの経済封鎖を続け、ベネズエラではクーデター未遂事件(二〇〇二年)を起こしました。コロンビアに軍事支援を続け、今年は中南米をにらむ「第四艦隊」を五十八年ぶりに再設置しました。

 米国の干渉に対して、中南米には、干渉を排して問題を域内で解決しようとする動きが脈々と流れています。中米の紛争に際して、八〇年代に「コンタドーラ・グループ」や、それを拡大した「リオ・グループ」がつくられました。南米諸国連合はこの流れを受け継ぐとともに、中南米での政治変革によって一段と広がった共同を通じて、同地域の平和を確保しようとするものです。

 十二加盟国のうち、コロンビアは軍事的に米国と深くつながり、エクアドルやベネズエラなど国境を接する国々との間で最近も緊張が起きました。こうした矛盾を抱えながらも、コロンビアも加盟で足並みをそろえたことは、域内の紛争を対話を通じて平和的に解決する枠組みがすえられたことを示しています。

 連合は首脳会議を最高機関とし、輪番議長(任期一年)にチリのバチェレ大統領が就任しました。全会一致を原則とする民主的運営をうたっています。「南米議会」も創設し、機構を拡充する予定です。

 歴史的、社会的、文化的に共通性をもつ中南米諸国の統合は自然な流れであり、今後は欧州連合(EU)にも比肩しうるものとして、中南米諸国の共同に拍車をかける求心力となるとともに、対外的に同地域の発言力を増すことになります。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp