2008年6月14日(土)「しんぶん赤旗」
主張
大阪府財政再建
赤字の元凶にメス入れてこそ
大阪府の橋下徹知事が発表した府財政の「再建」案(「大阪維新」プログラム案)が議論を広げています。
五兆円にのぼる借金を抱えた大阪府の財政「再建」策として今年度まず千百億円の収支を「改善」するとして、府民生活に直結する医療、福祉、教育などの施策の切り捨てや府民の負担増、文化やスポーツなど府の施設の統廃合、府の職員の人件費削減などを打ち出したものです。
橋下知事は今回の案を踏まえ、今年度の本予算案を七月の臨時府議会に提出する予定です。
府民サービスの切り捨て
自民党などに推されてことし二月府知事に就任した橋下氏は、府の「収入の範囲内で予算を組む」ことを公言し、とりあえず九年間で六千五百億円歳出を減らすとしてきました。そのためには府民にも「“少しずつのがまん”をお願いする」(プログラム案)と、府民に「自己責任」と「互助」を押し付け、府民向けの歳出を削減対象にしてきました。
今回の知事提案にも、私学助成の大幅削減や医療費助成の見直し、児童文学館など各種施設の廃止・縮小、府職員や教員などの人件費大幅削減など、府民サービス切り捨ての基本路線がつらぬかれています。とくに私学助成は全国最低水準まで引き下げる計画で、これでは教職員の給与カットどころか授業料の値上げも避けられないと、関係者から悲鳴が上がっています。
一九九八年度いらい九年連続赤字を続けている大阪府の財政破たんの最大の要因は、「オール与党」府政が政府の巨額の公共事業押し付けを積極的に受け入れ、推進してきたからであり、自公政府のもとでの長引く地方経済の低迷や地方交付税などの地方向け財源の削減も大きな原因になっています。
自民党などこれまでも与党だった勢力に推された橋下知事がその責任を棚に上げて「財政非常事態」を宣言しても本来通用しないことです。
第一、知事の提案では、「聖域のない削減」といいながら、政府の押し付けを受け入れた安威川ダムや新名神高速道の建設、彩都・箕面森町の大規模住宅建設など、無駄な大規模開発は引き続き推進し、利権がらみの同和行政も継続しています。府の「収入の範囲内で」とひたすら府民向けの歳出削減に走るのは、地方財政の安定に果たす国の責任をあいまいにすることにもなります。
橋下知事の「再建」案は、大阪府の財政破たんの原因にメスを入れないで、住民福祉の増進という地方自治体の理念さえ投げ捨て、住民サービス削減を進めるものというほかなく、抜本的な見直しが不可欠です。
財政再建に府民の議論を
府財政の再建のためにいま必要なのは、八百八十万府民の声を集め、何が必要かの本格的な議論を起こしていくことです。そのなかで、府財政破たんの原因を明らかにし、そこへメスを入れていくことです。
橋下知事が今回の提案の前に府庁内に設けたプロジェクトチームにまとめさせた提案には、小学校一、二年生の三十五人学級廃止、障害者施策の一部や救命救急センターへの助成の削減まで盛り込まれていました。これらの削減に反対する運動が急速に広がり、知事提案では結局見送らざるを得ませんでした。
こうした運動の成果を確信にして、知事提案の抜本的見直しを求める世論を広げていきましょう。日本共産党は府民の運動と連帯し、無駄な開発と利権、国の自治体いじめをやめさせるために全力をあげます。