2008年6月12日(木)「しんぶん赤旗」
アフガンで戦闘続く
米軍作戦に住民の批判
和平の道を探る動きも
米軍が侵攻して七年目の夏を迎えたアフガニスタン。米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍、アフガン政府軍と、タリバンら反政府勢力との戦闘が日々続いています。他方、アフガン政府と反政府勢力との対話を模索する動きも伝えられています。(小玉純一)
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アフガン駐留の外国軍は年々増えていまや約六万人です。この間の米軍とNATO軍の作戦で南部ヘルマンド州でのタリバン掃討作戦が、特に住民の批判を招いています。作戦には米海兵隊三千二百人が投入され、英国、カナダ、オランダ軍を補強して実施されました。
パジュワク・アフガン・ニュース(PAN)によると、ヘルマンド州選出の二人の上院議員が作戦を批判。住民に多数の死者が生まれ、家々が破壊され、人々は地域を追われ、無実の市民が外国軍に拘束されたといいます。国連当局の発表では千二百家族が国内避難民になりました。
上院議員は、外国軍の作戦が人心の離反を招き、多くの地域がタリバンの手に落ちていると指摘しています。
タリバンの攻撃も激化しているもようです。NATO軍の五月上旬の発表によると、タリバンの攻撃で年初から四月半ばまでに住民二百四十人が死亡。昨年同時期の六倍といいます。ロイター通信によると今月四日には、南部カンダハル州でタリバンがNATO軍の車列に自爆。近くにいた子ども二人が死亡しています。
他方、英BBCなどによると、部族指導者や市民団体のメンバー、政治家ら三千人が五月八日、カブールで、和平の道を探る会合を開きました。会合は、政府とタリバンらとの協議の下地を作るため、会合の代表がタリバンら反政府勢力と会談することで合意しました。なお、この会合は、外国軍の作戦が、住民を反政府勢力への参加に導いているという見方で一致しました。
ラバニ元大統領(現、野党議員)が五月下旬にロイター通信に語ったところによると、ラバニ氏は数カ月前に反政府勢力タリバンと接触、手紙を最近受けとりました。タリバンは紛争の政治的解決を求めているといいます。
カルザイ大統領の任期も来年まで。特に南部、南東部での戦闘が続き、大統領選挙実施も不確実だとの指摘もあるなか、各政治勢力がさまざまな思惑で動きだしています。
支援国会議 きょう開催
アフガニスタン支援国会議が十二日、パリで開かれます。サルコジ仏大統領主催で、支援国閣僚らが参加します。パリからの報道によると、約四十の人道支援団体代表がパリ会議に、軍事作戦よりも開発事業を優先することを求めています。
ロイター通信によると、国連アフガン特別代表のエイデ氏は、パリ会議で司法と警察の強化、農業とエネルギー支援を重視するといいます。
人道団体の活動家アンナ・フサルスカ氏は、米軍の毎年アフガンでの経費三百六十億ドル(三兆九千億円)に比べれば、アフガン政府が各国に求めている今後五年で五百億ドルの支援はわずかなものだと指摘しています(国際英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン三日付)。同氏は、軍事治安活動と人道的活動を一体化するのはアフガン国民に間違ったメッセージを与えることになり、混同させてはならないと強調しています。