2008年6月8日(日)「しんぶん赤旗」

防災の最前線なのに

10測候所また廃止・無人化

10月から 気象庁が計画


 全国二十八カ所で有人観測されている気象庁の測候所のうち、十カ所が廃止・無人化されることがわかりました。住民生活に密着してきた地方測候所の存続を求める声が上がっています。


地図

 今回の計画は、ことし十月から廃止・無人化されるもので、北海道から沖縄県まで八道県十カ所の測候所。留萌(北海道)、寿都(北海道)、小名浜(福島県)、富士山(静岡県)、米子(鳥取県)、西郷(島根県)、室戸岬(高知県)、屋久島(鹿児島県)、沖永良部(鹿児島県)、与那国島(沖縄県)。

 同庁は、自動化された機器により観測・即時的データ送信をすることができるようになったとして、一九九六年度以降、測候所の廃止・無人化(特別地域気象観測所への移行)を順次すすめ、昨年度までに六十六カ所を廃止・無人化しています。「国の行政機関の定員の純減について」では、二〇一〇年度までに原則としてすべての測候所を廃止(機械化・無人化)する方針です。

 関係自治体からも測候所の存続・拡充を求め、意見書の可決が相次いでいます。

容認できない

全気象が声明

 気象庁や地方気象台、測候所などの職員で構成する全気象労働組合は六日、気象庁の測候所廃止計画にたいし、きめこまかな気象情報の提供を求める地域住民の要求に逆らうもので、「到底容認できない」とする抗議声明を発表しました。

 声明は「近年、集中豪雨や津波を伴う大地震などが頻発している」だけに、住民への直接かつ確実な情報伝達の実現が重要だとして、計画の中止を求めています。


解説

温暖化や地震対策 拡充こそ必要

 「防災最前線」の重要な役割を担っている測候所の廃止は、自民・公明政府の「防災軽視」の姿勢を浮き彫りにする無謀な計画です。

 今回の計画では、地方気象台から離れた屋久島、沖永良部のふたつの測候所でおこなっていた空港での航空気象の観測・解説業務を自治体に丸投げしたり、中国などからの越境大気汚染物質の監視・観測にも役だってきた大気汚染観測地点の与那国島測候所の廃止まで含まれています。

 これまでに廃止・無人化された測候所の中には、岩手県大船渡市で五十三人の犠牲者を出したチリ地震津波災害(一九六〇年)の教訓から、当時の気象庁長官が「判断の甘さがあった」として、地元の強い要望をうけて創設されたところもありました。

 昨年も地方気象台から遠く離れた離島などの十三測候所が廃止・無人化されました。三重県では四日市、上野、尾鷲測候所がつぎつぎ無人化され、津地方気象台を除いて県内のすべての測候所がなくされました。三重県尾鷲市議会などは、東南海地震の発生も懸念されていると指摘し、全国屈指の多雨地帯にある測候所の無人化に反対する意見書を全会一致で可決、無人化計画の撤回を求めていました。

 日本共産党国会議員団も、国会でとりあげ、「地域の特性があるからこそ、測候所がそこにある意味がある」として計画の撤回を求めてきました。地球温暖化の脅威や大地震などに備えた測候所の拡充・強化こそ、政府に迫られています。 (宇野 龍彦)


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