2008年6月6日(金)「しんぶん赤旗」
沖縄新基地計画で欠陥アセス
ジュゴン通り道にカメラ
進路を妨害 防衛省が設置
今年は「国際サンゴ礁年」です。内湾では世界最大規模とされるアオサンゴが群生する名護市辺野古崎周辺で日米両政府が進める米軍新基地建設計画の是非は沖縄県議選の重大争点の一つです。
五月三十日午前、名護市辺野古崎にかかる大浦湾。ダイバーたちから歓声があがりました。
「すごい。まるでサンゴの博物館だ」
ジュゴン保護基金理事の大西照雄さん(64)がかじをとる「平和丸」で、専門家たちとサンゴ群落の調査をしました。同海域ではアオサンゴの大規模な群落が発見されています。この日は新たに広い範囲にわたってさまざまなサンゴが「お花畑のように広がっているのを確認した」(大西さん)といいます。
同湾には新基地建設のための作業ヤードの設置が計画され、工事によるサンゴ礁への深刻な影響が指摘されています。
「この説明図を見てください」。アメリカでのジュゴン訴訟原告の一人で建築家の真喜志好一さんが手にする一冊の裁判資料。ジュゴンの生存が危険にさらされるとして新基地建設の違法性を立証する訴訟で、米国防総省が証拠資料として提出した文書です。
説明図は、防衛庁(当時)が米側に提出した英文資料。辺野古崎周辺で実施している新基地建設にかかわる「事前調査」のイメージ図。同図によるとジュゴンの生態を記録するビデオカメラを、ジュゴンの負担にならないように通り道の側面に設置することになっています。
真喜志さんはジュゴン訴訟の支援グループが撮影した水中写真を示して、こう告発します。「事実はジュゴンの通り道の真ん中、まるでジュゴンを迎え撃つ銃口のように設置された」
鳴き声を記録するパッシブソナーも、ジュゴンが泳いでくる道をふさぐように設置されているといいます。
環境アセスメント法には「事前調査」という手続きはありません。二〇一四年完成という米政府との合意に間に合わせるために、防衛省が考え出した違法行為です。
影響予測調査の方法書をめぐっても環境保護団体などが「これでは事業内容が不明、影響の予測・評価の方法もあいまいだ」と反論。米連邦裁判所のジュゴンへの悪影響を回避する情報開示を求める勝訴判決などで追いつめられながらも、防衛省は「欠陥アセス方法書」(大西さん)で強行する構えで、仲井真県政も容認姿勢です。
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県民6割がノー
八日投票の沖縄県議選。地元紙の有権者アンケートでも、新基地建設問題について、仲井真県政の「政府案の沖合移動」の13・7%に対し、「県外・国外へ」が59・3%で最多です(「琉球新報」一日付)。新基地ノーは県民の願いです。
日本共産党は県議選での躍進の意義をこうよびかけています。「日米両政府の新基地建設の押しつけ、無法の背景に安保条約がある。安保廃棄の党、日本共産党が県議会でがんばってこそ、県民ぐるみ島ぐるみの世論を起こし、基地のない平和で豊かな島をめざすことができるのではないでしょうか。そのために日本共産党を大きく躍進させてほしい」
大浦湾でダイビングを楽しむ那覇市の女性(30)は期待を込めて言います。「米軍基地の足元の大浦湾に本当にジュゴンやサンゴがいるのか半信半疑だったが、実際に潜って目の前にオレンジ色のクマノミがサンゴの周りを乱舞するシーンを見たときの感動は忘れられない。世界に誇れるこの美ら海を新基地建設で破壊することは許されない。日本共産党の議席を大きくして沖縄の海を守りたい」
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