2008年6月6日(金)「しんぶん赤旗」
主張
国籍法違憲判決
子どもたちの笑顔に応えよ
「これからは日本人として夢に向かってがんばりたい」「妹と同じ国籍になれた」―。勝訴を喜ぶ子どもたちの笑顔に、喜びをともにするとともに、この笑顔に応えなければとの決意を新たにしました。結婚していない日本人の父親とフィリピン人の母親から生まれた子どもたち十人が、日本国籍を求めた裁判です。
一審の東京地裁は勝訴、二審は敗訴。これを受け最高裁は四日、両親の結婚を国籍取得の要件とした国籍法の規定は「法の下の平等」を定めた憲法に違反するとの判断を示し原告全員に日本国籍を認めました。子どもたちの利益にそった判決です。
親の結婚での差別認めず
日本の国籍法は、かつては父親が日本人の場合にだけ日本国籍を認める決まりでしたが「男女平等に反する」との批判を受け、一九八四年の改正以降、子どもが生まれたとき父母のどちらかが日本人なら日本国籍が取得できる原則になっています。
ところが、母親が日本国籍なら子どもも日本国籍になるのに、母親が外国人で結婚していない日本人の父親との間で生まれた子どもは、父親が出産前に認知するか、出産後に認知し両親が結婚した場合でなければ、日本国籍が取得できないことになっています。両親が結婚しているか否かによって、子どもの国籍取得に差別が生まれているのです。
このため父親が認知しているのに日本国籍が取得できなかったり、結婚していない同じ父母から生まれた子どもでも出産前に認知した子とそうでない子で国籍が違う例が相次いでいます。全国的には、日本国籍が取得できていない子どもたちが数万人にのぼるという推計もあります。今回の裁判は東京、埼玉、神奈川に住む子どもたち十人が原告になりましたが、その背後にいる多くの子どもたちのためにも、事態の打開は一刻の猶予も許されません。
最高裁判決は、国籍法の決まりは、法改正された八四年当時は「合理的」だったが、現在では外国人の母親と日本人の父親との間で生まれる子どもが増え、事実婚など必ずしも結婚しない男女関係や親子関係も増えているので、父母の結婚を国籍取得の条件にするのは適切でなくなったと述べています。結婚や家族の変化に配慮した妥当な判断です。
世界的には、アメリカのように出生地により国籍を認める国と欧州など血縁により国籍を認める国があります。出生地主義の国では今度のような問題は起きませんが、血統主義の国でも親の結婚を子どもの国籍取得の条件にしている国はほとんどなくなっています。最高裁判決は世界の大勢にも沿ったものです。
もともと日本国憲法は一四条で、「法の下の平等」を定め、「差別されない」ことを明記しています。日本も批准した「子どもの権利条約」は、子どもの権利のひとつとして名前や国籍を得る権利を定めています。こうした精神にたてば、子どもたちの国籍取得が不当な理由で差別されないようにするのは当然のことです。
政府は判決受けとめて
日本共産党は、生まれてくる子どもたちの国籍取得が親の性別や親の結婚などで差別されることがないよう求め続けてきました。
最高裁判決は十人の原告について日本国籍を認めましたが、国はそれにとどめず、国籍法の改正など必要な措置に取り組むべきです。
日本国籍を取得してよかったと喜ぶ子どもたちの笑顔が一人でも増えるように、政府と国会が議論を急ぐことが求められます。