2008年6月2日(月)「しんぶん赤旗」

社会リポート

沖縄・普天間基地の米軍機

地デジの電波を妨害

映像途切れ苦情相次ぐ


 地上デジタル放送の全国的なエリア拡大が進む一方で「見えにくい」「聞こえなくなる」といった難視聴問題がクローズアップされています。沖縄県では米海兵隊の普天間基地(宜野湾市)周辺で米軍機が飛行するたびに、テレビ画面が乱れたり、映像がまったく見えなくなるなどの障害が発生、苦情や問い合わせが市役所に相次いでいます。


 「市民にとっては切実ですよ」と宜野湾市役所の新里優・基地渉外課長が手にしたA4判の用紙。「地上デジタル放送受信被害に係る市民苦情」と表題があります。

 同市は「現在の放送が二〇一一年七月に打ち切られ地デジ放送に切り替わってからでは遅い。実態を把握する必要がある」と市広報やホームぺージなどで市民に実態の報告をよびかけています。

基地をぐるり

写真

(写真)米海兵隊普天間基地をとりまくように苦情が報告されている米軍機による地デジ受信被害のポイント(○印)=沖縄県宜野湾市作成

 「市民苦情」には、昨年十一月からこれまでに寄せられた苦情内容が整理されています。

 「地デジが見られるテレビを購入したが、米軍機が飛ぶたびに映像が途切れ、三十秒から一分間にかけて画像が見えなくなる」(宜野湾市野嵩三丁目)

 「多いときでは一時間に十数回、五秒から十秒程度受信ができなくなる。テレビを見ても内容がほとんど頭にはいらない。何のために高額を払って地デジに変えたのかわからない」(同市嘉数四丁目)

 「今も軍用機が飛行しているが、そのたびに地デジの画面が二―三秒程度途切れてしまう。録画しても画面が切れて録画にならない。どうにかしてほしい」(同市真栄原二丁目)

 市基地渉外課は、寄せられた市民の苦情の所在地を市内地図に落としてみました。苦情発生地は普天間基地をぐるりと囲むように現れています。

市も調査要請

 普天間基地では海兵隊の大型ヘリやC130輸送機などがひんぱんに離着陸。さらに基地周辺の住宅が密集する市街地上空を低空での旋回飛行が日常化しています。

 基地渉外課は「現在のアナログ放送でも米軍機による電波障害はあるが、それは画面が揺れるもので、まったく見えなくなることはない。しかしデジタルの場合、画面がブロック状に消えたり、『受信ができません』と真っ黒になるなど経験したことのない事態」と深刻に受けとめています。

 市側は、地上デジタル放送を進める総務省沖縄総合通信事務所に調査を要請。同事務所は、アンテナの上空を飛ぶ飛行機に電波が反射して電波が乱れることによるフラッター障害が起きているのかを確認する調査を実施するとしています。

 調査は、普天間基地のヘリ部隊がタイでの演習「コブラ・ゴールド」から帰還後に実施する予定です。総務省は同調査で原因が米軍機であることが確認されれば、沖縄防衛局と対応を協議する、としています。

◇      ◇

 米軍基地での米軍機飛行による地上デジタル放送への電波障害は、神奈川県の米海軍厚木基地周辺でも発生しています(本紙〇六年七月一日付既報)。

 同基地を抱える綾瀬市は、〇六年一月から三月にかけて市内二十地点で実施した調査記録をもとに横浜防衛局に対応を要請。同局は現在のアナログ放送での共同受信施設を地デジ対応に改修するとしています。

 内閣官房が二十六日に開いた、地デジへの移行完了のための課題を協議する関係省庁連絡会議で、国土交通省が民間航空機、防衛省が自衛隊機による受信障害の有無についてそれぞれ調査し、「必要な措置を講ずる」ことを確認しています。ところが、米軍機については触れられていません。



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