2008年6月1日(日)「しんぶん赤旗」
主張
クラスター爆弾
保有国をさらに追いつめて
アイルランドのダブリンで開かれていたクラスター爆弾禁止国際会議は五月三十日、一部の最新型を除いてほとんどのクラスター爆弾を禁止する条約案を、日本を含む全会一致で採択しました。
禁止条約の今年末までの締結をうたった昨年二月のオスロ(ノルウェー)宣言に沿い、条約案は十二月初めにオスロで調印される予定です。アメリカやロシア、中国が参加せず、会議参加国の一部にすら全面禁止に反対する動きがあったなかで、ここまでこぎつけたのは、禁止を求める有志連合国や国際人道機関、NGO(非政府組織)が粘り強く折衝してきたからです。
「例外」拡大策の失敗
「クラスター爆弾禁止条約」は、クラスター爆弾の使用、開発、製造、取得、貯蔵、保有、移転を禁止し、条約発効から遅くとも八年以内に廃棄することを義務付けています。犠牲者支援も対人地雷禁止条約以上にしっかり明記しています。
クラスター爆弾は、各地の紛争で使い勝手がいいとして多用されてきました。親爆弾から飛散する多数の子弾のうち不発のまま地上に残った子弾が、拾ったり、踏みつけたりした途端爆発し、子どもをはじめ民間人を殺傷する非人道的残虐兵器です。これまでの犠牲者の合計は、十万人をはるかに上回ります。最近も、アメリカがアフガニスタンやイラクで、イスラエルがレバノンで使用し、批判をあびています。こうした悲惨な事態をくりかえさせないために、全面禁止が必要不可欠です。
NGOは、条約案によって、99%のクラスター爆弾が禁止されるといっています。六十近い保有国がもっている爆弾のほとんどを放棄させることができるということです。それはクラスター爆弾による犠牲者を大きく減らすことにつながります。条約案が大きな役割を果たすのは疑いありません。
会議では、当初、幅広い例外を求める動きが一部にありました。しかし、英国やドイツなどが全面禁止の要求に押されて、例外拡大方針を転換した結果、子弾の数は十個未満、子弾の重さは四キロ以上、目標識別機能をもつ、不発のさいの自爆機能をもつ、「自己無能力化」機能をもつ―のすべての要件を満たすものだけを例外とする条約案ができました。
日本政府だけは最後まで、例外を拡大するよう要求し続けました。条約非加盟国との共同作戦に締結国が参加できる道も求めました。最後には「悪いのは日本」という批判がでたほどです。国際社会から完全に孤立したこの異常な行動は、「オスロ・プロセス」にも参加せず、クラスター爆弾に固執するアメリカへの追随が原因です。
こうした例外拡大策は成功しませんでした。こんごは禁止条約の締結国を増やし、アメリカなどの条約非加盟国もクラスター爆弾を使用できないような状況をつくりだすことが課題です。国際社会が力をつくすことが重要です。
日本はただちに実践を
日本政府が会議最終日になってようやく条約案への賛成を決めたのは、国内外の禁止要求を無視できなかったからです。自衛隊は空自も陸自もぼう大な数のクラスター爆弾をもっています。条約案に賛成した以上、十二月を待たず、率先して保有爆弾のすべてを廃棄すべきです。
日本は戦争を放棄し、平和的手段で紛争を解決することをうたった憲法をもっています。政府は、クラスター爆弾を世界から一掃するために力をつくす必要があります。