2008年5月30日(金)「しんぶん赤旗」
国家公務員基本法案
修正しても変わらず
癒着をさらに深める
労働基本権を認めず
政府・与党と民主党が修正合意し、二十九日の衆院本会議で可決・通過させた公務員制度改革基本法案は、政・官・業の癒着根絶など国民が求める改革にこたえるどころか、いっそうひどくしかねない政府案の基本点を何ら変えるものではありません。
癒着一掃の問題では、政府案で「官民の人材交流の推進」が明記されるなど、昨年、「天下り・天上がり」が法改定で自由化されたもとで、癒着をさらに深めることが懸念されていました。
民主党は「改革の核心は天下り廃止だ」(馬淵澄夫衆院議員)と主張していましたが、修正案には一言も盛り込まれず、癒着を生む「官民交流」は手付かずのまま。「総合職」と名前を変えただけの特権官僚制度も修正されずに残されました。
労働基本権についてはその一部である労働協約締結権について「国民の理解を得て検討する」とした政府案から、「国民の理解のもとに自律的労使関係制度を措置する」としました。協約締結権などの付与を明確に打ち出した政府の調査会報告からも後退しています。
労働基本権のはく奪は国際労働基準に反するとILO(国際労働機関)が三度も日本政府に是正勧告しており、公務労働者が国民の立場から行政をチェック・改革するためにも緊急課題です。修正案はこうした要請にほど遠いものであり、マスメディアからも「労働基本権と天下り禁止を譲った」(「朝日」二十八日付)と指摘されています。
修正案では、国会の監視機能を封じると批判されていた「公務員と国会議員との接触規制」が削除されました。これは当然のことですが、政府案のままの「官民交流の拡大」や「幹部人事の内閣一元化」などを見れば、「全体の奉仕者」であるべき公務員を、官邸と政権党、財界の奉仕者に仕立て上げようとする根幹は変わっていません。
一連の「修正」の背景には、天下り問題や労働基本権などを除けば、与党と民主党の立場に大差がないことがあります。両者は「官僚主導から政治主導へ」と言葉も論理も同じ立場から「政治任用」や「官民交流」の拡大、公共サービスを切り捨てる公務の民営化、公務員の削減を競い合ってきました。
しかし、貧困と格差が広がるなか国民は「構造改革」路線の転換を求めています。公務員が「国民全体の奉仕者」として働けるよう、労働基本権回復や政官財の癒着の根絶、公共サービスの拡充などを盛り込んだ基本法案に改めるべきです。(深山直人)