2008年5月30日(金)「しんぶん赤旗」
主張
アフリカ開発会議
打算捨て貧困救済を真正面に
福田康夫首相は、横浜市でおこなわれている第四回アフリカ開発会議で、アフリカ向け政府開発援助(ODA)をこんご五年間で倍増するなどの支援策を表明しました。
アフリカから五十人を超す首脳・閣僚が参加したこの会議の焦点は、アフリカの貧困救済です。「元気のいいアフリカ」にするには、国際社会の一致したとりくみが欠かせません。アフリカ支援が立ち遅れ、「アフリカ諸国が望んでいるレベルに達していない」(リベリア大統領 昨年七月)とまでいわれている日本は、この会議を機に、貧困救済に真正面からとりくむことが求められています。
打算が透けて見える
日本政府の約束は、二〇〇三年から〇五年までの国際的義務の債務救済分を除いたODAの平均一千億円を、一二年までに二千億円にするというものです。この本来のODAを倍増する方針それ自体は重要です。問題はそれをアフリカのどこに、どの分野に向けるかです。
アフリカ五十三カ国のうち四十八カ国が属するサハラ砂漠以南のなかでも、三十四カ国が一日一ドル未満で生活する絶対的貧困国です。この三十四カ国の貧困救済がアフリカ問題の中心的緊急課題です。
しかし、日本のアフリカ向けODAは、石油や希少金属など資源が豊富な国や日本企業の進出・投資が進んでいる一部の諸国には手厚くなるが、絶対貧困国三十四カ国には薄くなるばかりというのが実態です。
〇六年には、サハラ以南の四十八カ国向け総額(債務救済分を含む)が約二十五億六千万ドルと〇三年の四倍にもなったのに、三十四カ国向けは六億八千万ドル、〇三年の五割しか増えていません。多くは資源が豊富な国々や日本企業が進出している国々に回っています。アフリカ向けODAを倍増するといっても、こうした偏った援助を続けるのでは、アフリカ諸国民の願いにこたえることができないのはあきらかです。
見過ごせないのは、貧困救済といいながら、政府が企業利益のためにODAをつよめるといっていることです。外務省が四月に発表した「成長加速化のための官民パートナーシップ」は、「ODA等公的資金との連携により、日本企業の途上国における活動のリスクやコストを軽減」するとのべています。道路や港などの経済活動基盤を血税で整備するという財界要求にそうものです。
日本経団連は、昨年十二月にだした意見書で、「民間主導のプロジェクトを円借款や技術協力・無償資金協力で補完、支援する仕組みを構築すべき」だといっています。貧困救済事業を新たなもうけのタネにする財界・企業のいいなりでは、ほんとうに必要な貧困救済にODAが回らなくなるのは避けられません。
福田首相は演説で、「国連安保理改革も追求していく」とものべました。ODAをテコに、日本の安保理常任理事国入りへの支持を押し付けるもので、許されるはずがありません。
政府は、目先の利益や企業奉仕といった打算を捨て、アフリカの貧困救済に力をつくすべきです。
人道援助を中心に
日本は、貧困救済策のかなめである食料援助や教育・保健などの社会基盤整備などの人道分野でODA実施二十二カ国のなかで最低クラスです。福田首相はアフリカでコメの生産高を十年で倍増させようと訴えもしましたが、政府が貧弱な人道援助政策を見直し、貧困救済を中心にすえてこそ、アフリカ諸国民の願いに応えることができます。