2008年5月28日(水)「しんぶん赤旗」
国家公務員制度基本法案の狙いは
企業による企業のための行政づくり
国家公務員制度改革基本法案が現在、衆院内閣委員会で審議中です。政府は、目的を「行政に対する信頼を回復し、国家公務員が常に国民の立場に立って職務を遂行する」(渡辺喜美国家公務員制度改革担当相)ためとしていますが、日本共産党の追及により、真の狙いの一端が浮かび上がっています。
公務員制度については、軍事利権や公共事業など政官財の癒着が国民の批判を浴びてきました。「改革」というからには、この癒着の根を断ち切るかどうかが根本から問われています。
癒着「合法」化
法案が審議入りした九日の衆院本会議で、日本共産党の塩川鉄也議員は癒着の具体例として、原子力安全委員会(内閣府)の規制調査官に、三菱重工など原発メーカー社員が「指定席」で採用され、任期終了後に企業に戻る驚くべき実態を明らかにしました。原発メーカーが原発の安全性をチェックするというのです。
公務員は「全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」(憲法第一五条)とされ、公正性・中立性が求められます。
民間企業の社員が官庁で仕事をする際に用いられる官民交流法でも、「官民癒着」を防ぐために、出身企業に対する許認可を行うポストにはつけないなどの制限があります。
しかし政府は、非常勤職員や、任期付職員法など官民交流法によらない制度を使って、民間企業の社員を官庁に採用してきました。原子力安全委員会のケースでは任期付職員法が用いられました。
公務の公正性・中立性を確立するには、こうした「脱法行為」を許さないことが必要です。逆に法案では「官民の人材交流」について、「手続きの簡素化及び対象の拡大」を行うとして、官民癒着を「合法」にしようとしています。
二十一日の委員会審議で塩川氏が現行の官民交流法の扱いをただしたのに対し、渡辺担当相は「検討の対象になる」とのべ、緩和を示唆しました。
ビジネス創出
「官民の人材交流」では、行政が企業の食い物にされる危険も高まっています。
例えば、医療産業特区。これは医療法では認められない、営利目的の医療機関開設を可能にする規制緩和です。
主導したのは、政府の規制改革民間開放推進会議事務局の医療ワーキンググループで、オリックスと三菱商事、日本生命の社員が参加していました。規制緩和を受け、二〇〇六年にバイオマスター社が全国初の株式会社の診療所を横浜にオープン。同社の主要株主はオリックスキャピタル、ダイヤモンドキャピタル(三菱グループ)、ニッセイキャピタル(日本生命系列)で、まさに「自作自演」でもうけ先を作ったのです。
塩川氏は、総務省の調査報告に、官民交流の民側にとってのメリットとして「新たな『ビジネス機会』の創出」と書かれていることを示して、「メリットは、官でしか得られない情報が出身企業で新たなビジネスの創出につながることではないか」と批判しました。
行政に民間企業が入り込み、企業のための仕事を行う―。これがさらに広がるというのでは、「改革」の名は泣くばかりです。(清水 渡)