2008年5月27日(火)「しんぶん赤旗」
G8環境相会合 日本の消極姿勢に批判
温室ガス削減 中期目標で新提起なし
解説
二十六日に閉幕した主要八カ国(G8)環境相会合は、焦点の地球温暖化問題で日本が新たなイニシアチブを示さず、七月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)や、二〇一三年以降の温暖化防止の新たな国際協定づくりにとって、大きな突破口を開くこともなく閉幕しました。議論を通じて日本の消極姿勢への批判が強まっており、サミット議長国としてのかじ取りの困難さを予想させる会合となりました。
責任あいまい
「セクター別アプローチも長期目標も、義務的な中期目標の代わりにはならない。先進国が二〇年までに一九九〇年比で25―40%削減する中期目標で合意しなければ、気温上昇を工業化開始前から二度以内に抑える目標は達成できない」
二十五日の温暖化問題の論議を前にドイツ政府代表はこう語り、「セクター別アプローチ」や長期目標での合意をサミットの「成果」にしようとする日本の姿勢を批判しました。
その直後の鴨下一郎環境相の基調講演は、日本が求められている中期目標設定についての新たな提起が何もない一方で、発展途上国関連の対策ばかりを詳しく述べるものでした。
そこからは、(1)「温室効果ガス排出量を五〇年までに世界全体で半減する」との長期目標を「目指すべきビジョンとして共有」することをサミットの「成果」とする(2)先進国の取り組みと同時に「途上国の削減行動も必要」だと主張して日本の責任をあいまいにしたい―といった姿勢がうかがえました。
目標が不明確
国連気候変動枠組み条約のデブア事務局長は二十五日の記者会見で、「長期目標は長期目標。中期目標が明確にならなければ企業はどう投資してよいか分からない」と述べ、温暖化防止を具体化する上で中期目標設定が決定的だと強調しました。
しかし、最終日に発表された議長総括は中期目標について、「IPCCの科学的知見を考慮して実効的な目標を設定する必要性が認識された」というだけです。長期目標についても、あいまいな表現にとどまりました。鴨下環境相は閉幕後の共同記者会見で、「中期目標は国際交渉の中での話」だとし、日本の目標提示は時期尚早との立場を示しました。
これに対しドイツのマハニッヒ環境事務次官は「科学は明確に25―40%削減を求めている」と指摘。「義務的な中期目標」設定は一三年以降の新協定づくりで「カギを握る問題だ」と力説しました。
混乱招く提案
「セクター別積み上げ」方式への日本の固執は、引き続き混乱を招きました。これに支持を表明したのは、二十四日の「各界との対話」で発言した日本経団連と日本商工会議所の代表だけ。閣僚会合で日本は、この問題での立場を明確に説明するよう求められました。
欧州委員会環境総局のデルベーケ副総局長は二十五日の記者会見で、会合での議論で「削減数値目標が重要だという点で異論はない」とし、「セクター別」方式が「削減数値目標を補完する上で有益だという点で全員が合意した」と述べました。
議長総括は、「セクター別アプローチは国別総量目標…を代替化するものではないことが明確化された」と明記しました。
さらに、「ボトムアップ」(積み上げ)方式と、まず排出上限目標を設定する「トップダウン」方式の「ギャップが埋められる必要がある」と表現。日本が主張する「セクター別」積み上げ方式だけでは総量削減目標を達成できないことを、事実上認めた内容になっています。(坂口明、中村秀生)
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