2008年5月26日(月)「しんぶん赤旗」
教育予算の貧困 正当化
財務省、国際比較の偽り
「『日本の教育予算が少なすぎる』というのは事実と違う」―財務省がこんな“反論資料集”を作成し、教育予算の増額を求める世論を抑え込むことに躍起になっています。
教育予算をめぐっては、この間、自民党文教族や文部科学省などが「GDP(国内総生産)比で現在の3・5%から5%に引き上げるべきだ」と主張。政府が近く閣議決定する「教育振興基本計画」の素案にも、十年間で「5%を上回る水準を目指す」と書き込まれました。財務省資料は、こうした動きに対抗するためのものです。
胸を張れない
しかし、財務省の示した資料からも、教育投資を増やす必要性は逆に浮かび上がっています。
例えば、日本の教育への公的支出の対GDP比が3・5%でOECD(経済協力開発機構、三十カ国加盟)各国平均5%より少ないことは否定できません。財務省資料も「文部科学省資料」として引用しています。(図上)
財務省はこれに、「わが国はOECD諸国の中で最も生徒の数(総人口に占める在学者数の割合)が少ない」と「反論」します。少子化が進んでいるから、国の教育予算が少ないのは当然だというのです。
しかし、これは国の貧困な教育政策を合理化するものです。少ない生徒数に合わせた少額の教育支出だけを確保すればよいという発想です。家計の教育費負担の重さが少子化を進めていることへの反省もありません。
財務省資料は、「わが国の生徒一人当たり教育支出はG5(米英独仏日の主要五カ国)平均並みの水準」(図下)とも主張します。しかし、ここで際立つのは日本の教育支出に占める私費負担の割合の高さです。G5では米国が日本を上回っていますが、他の国は日本の六割程度かそれ以下です。米国政府は返還の必要のない給与制奨学金に毎年一兆円以上を支出していますが、日本にはそれもありません。「G5平均並みの水準」などと胸を張れる状況ではありません。
そもそも「日本の教育予算は少なくない」という財務省の主張には無理があります。財務省資料がもとにしているOECD「図表で見る教育2007年版」で見ても、初等中等教育(小・中・高校)での生徒一人当たりの公財政教育支出GDP比は、OECD平均3・6%に対し、日本は2・7%で三十カ国中下から三番目。高等教育(大学・短大・高等専門学校)では、平均1%に対し日本は0・5%で韓国と並んで最下位です。
地盤沈下招く
教育財政の問題に詳しい三輪定宣千葉大名誉教授は、財務省資料について「財政効率至上主義が先行し、過去の路線の正当化に終始している」と批判。「こんな考え方を続けていては、日本の教育の地盤沈下は避けられない。教育への公的支出を拡充させる国民的議論と運動がいまこそ必要になっている」と語っています。(坂井希)
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