2008年5月24日(土)「しんぶん赤旗」
革新政権攻撃へ 新連合
野党勢力 農業ストの「基盤」利用
アルゼンチン
【メキシコ市=島田峰隆】農産物の輸出税引き上げに反対するストライキを続けてきたアルゼンチンの農業団体は十九日、抗議行動の一時停止を決めました。中止の要求が財界団体にまで広がったことを受けたものですが、一連のストを革新政権への攻撃に利用してきた野党勢力は、ストを機に反政府勢力の新たな連合づくりに踏み出そうとしています。
スト不支持拡大
新自由主義の経済路線からの脱却を目指すフェルナンデス政権は三月上旬、大豆とヒマワリの輸出税引き上げを提案。大豆の国際価格高騰に見合った税負担を生産者に求めました。収益を貧困層向けに再分配することが目的でした。
しかし大土地所有者で構成する農牧協会など農業団体は強く反発。中小零細農民を巻き込んで三月から二カ月近く、幹線道路の封鎖、穀物販売と輸出の停止などの抗議行動を断続的に続けてきました。
この結果、大都市では基本食料品の供給が滞り、世界的な食料価格の高騰による不安をいっそう強めました。特に五月に入ってからは、経済危機を懸念した市民が、銀行預金を引き出す動きが急増。国民の間でもスト不支持が増えました。
十七日には商工会議所や民間銀行協会などが抗議行動の中止と政府との交渉開始を求める立場を表明。これをうけてストの一時停止が決まりました。
国民不安あおる
この間、都市部の富裕層を基盤にする野党勢力は、反政府集会を繰り返して組織し、農業ストによる国民不安をあおり、混乱を革新政権に対する攻撃に利用してきました。ブエノスアイレスからの報道によると、その「実績」を基盤に、今度は革新政権に反対する一点で一致できる勢力を結集する新たな連合づくりが始まっているといいます。
これには、農業団体の要求を軸にしながら、政府の経済政策に反対する財界団体、マスメディア、右派政党、首長、国会議員をはじめ、左翼を名のる小政党まで幅広い勢力が参加する予定です。
アルゼンチンの専門家はメキシコ紙に対し、「野党勢力は、(反政府という)共通の主張を強めるために、政府と農業団体との衝突をうまく利用している」と指摘。「前政権の四年間にできなかった」規模で攻撃を強めようとしていると語りました。
政府は、農業ストを利用した攻撃を強く批判しています。フロレンシオ内相は十六日、ラジオ番組で、抗議行動は「国民多数が投票で選んだ大統領に対する軽視であり、それは国民にも向けられたものだ」と語りました。