2008年5月24日(土)「しんぶん赤旗」

主張

米大統領選

転換期の政策がみえてくるか


 米大統領選挙まで半年を切り、異例の長期にわたった民主党予備選挙では、バラク・オバマ候補が事実上の勝利を宣言しました。

 政権末期のブッシュ大統領は、米国史上まれにみる不人気な大統領として名を残しそうです。CNNテレビが一日に発表した世論調査では、同大統領の不支持率は71%と、「どの大統領も記録したことのない70%水準を超え」(CNN)ました。不人気の最大の理由はイラク戦争にあります。同世論調査では、イラク戦争への反対は68%に達しています。

“脱ブッシュ”のなか

 ブッシュ政権への反対が渦巻くなか、民主党予備選では、オバマ氏の「チェンジ(変革)」のスローガンが、“オバマ現象”と呼ばれるまでに支持者の共感を呼びました。

 アフリカ系市民として初の大統領をめざすことなど独特な経歴もさることながら、「イラク戦争に最初から反対してきた」とのオバマ氏の主張が、米国民の意識に新鮮に受け止められています。

 ブッシュ大統領の後継としてイラク戦争の継続を主張するジョン・マケイン共和党候補はもちろん、オバマ氏と民主党候補者指名を争うヒラリー・クリントン候補も二〇〇二年に米議会での対イラク武力行使容認決議に賛成しています。それに対し、「イラク撤退にただちに着手し、全戦闘部隊の撤兵を十六カ月で完了する」というオバマ氏の公約は、“脱ブッシュ”の方向を示す中心的な政策となってきました。

 米国では「米国の時代は終わったか」(『フォーリン・アフェアーズ』誌)「信じがたいほど縮む超大国」(『タイム』誌)など、米国の「威信の低下」に注目した議論が盛んです。ブッシュ流の一国覇権主義が、米国民の反対を強めるとともに、国際的にも米国の孤立を深め、破たんが明白になっていることが、その背景にあります。

 ブッシュ政権は、無法なイラク侵略をはじめ、地球温暖化問題で温室効果ガスの最大の排出国としての責任を投げ捨てて温暖化防止の京都議定書に背を向け、戦争犯罪などで個人を裁く国際刑事裁判所条約では、受け入れを拒否しただけでなく、米兵を同裁判所に引き渡さないとの約束を各国に強要しました。

 一方、世界ではイラク戦争の開戦をきっかけに国連憲章の原則を擁護する動きが強まってきました。東南アジアや中南米などでは、軍事力に頼らず、地域の共同によって平和の構築をめざす動きが強まっています。一国覇権主義を拒否した、新しい平和の国際秩序がそこにあります。

オバマ現象の行方

 オバマ氏には、国連憲章の尊重を主張しないばかりか、世界平和にとって受け入れられない要素があることも見過ごせません。

 イラク撤退に関して、オバマ氏はイラク軍の訓練や国際テロ組織追撃を理由に、米軍の一部駐留を容認する姿勢を見せています。撤兵後の再展開も拒否していません。

 世界の軍事費の半分を占める米軍事費を増額する意向も示しています。オバマ氏は著書『合衆国再生』で「不本意ながら、わが国が再び世界の保安官の役割を担わなければならないときはくるだろう」とし、「これは変わらない。変わるべきでもない」と書いています。

 米国の平和運動関係者の間では、政治転換を求めてオバマ氏に強い期待感がある半面、懸念を表明する声もあります。転換期の政策がみえてくるか、が問われています。


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