2008年5月23日(金)「しんぶん赤旗」
トヨタ、QC手当拡大
「業務外」扱い見直し
トヨタ自動車は二十二日までに、ただ働きとなっている「QC(品質管理)サークル」の残業代の代わりに支給している手当について、月二時間の上限を六月から拡大することを決めました。「労働時間に認めるべきだ」との世論に押されて見直しを余儀なくされたものです。
QCサークルは品質・生産性向上運動の柱であるにもかかわらずトヨタは「業務外」だとし、「活動を奨励する」として月二時間まで手当を支払っています。しかし、持ち帰り残業となっており、「月に四、五時間は自宅で作業する」との声が上がっています。
本紙の取材にトヨタ広報部は、QC活動は残業代の対象となる業務ではないものの、その代わりに支払う手当の対象となる「“業務扱い”の時間を拡大する」と説明。詳細は実施時に明らかにするとし、QC活動以外の「創意くふう」「ヒヤリ提案」などの自主活動については、「全部について手当を払うわけではない」としています。
QCサークルをめぐっては、トヨタ労働者の内野健一さん=当時(30)=の過労死事件で、QCサークル等は労働時間だとした名古屋地裁判決が昨年十二月、確定。日本共産党の小池晃参院議員の質問に舛添要一厚労相は、判決に従い労働行政を進めると答えました。
解説
世論に押され修正
トヨタ自動車が、「隠れたサービス残業」といわれるQC活動について、「業務扱い」とする部分を拡大することになったのは、「長時間労働、ただ働きをなくせ」という労働者のたたかいと日本共産党の国会論戦をはじめ世論と運動に押されたものです。
トヨタの巨額の利益の源泉となってきた「カイゼン」活動は、QC活動などの膨大なただ働きと、「乾いたタオルまで搾り取る」といわれる労務管理が支えてきました。そのQC活動を見直さざるを得なくなったのは、「業務外」扱いにしてただ働きを押し付けてきた路線の破たんであり、労働者の雇用と生活を守る上で注目される変化です。
同時にトヨタは、あくまで業務ではなく「業務扱い」とするにとどめ、労働時間と認めない姿勢に固執しています。手当ての上限も不明確なうえに、QC活動は今後、月二時間程度に収めるよう求めるとしています。見直しもされないQC活動以外の「自主活動」と併せて、ただ働きが温存される可能性もあります。
法律にも判決にも従わず、労働時間と認めない姿勢に固執するならば、労働者・国民との矛盾を広げざるをえません。(深山直人)
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