2008年5月19日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

“死なないで”生きる連鎖を

自殺未遂経験者「こわれ者の祭典」


 「死ぬな、殺すな、生きていよう」。全国で若者を中心に硫化水素自殺が相次ぐなか、こんなメッセージを込めたライブイベント「ストップ! 硫化水素自殺」が、東京・新宿で行われました。ネットで広がった「自殺の連鎖」を「生きる連鎖」に変えようと、かつて自殺を図った経験のある当事者が声を上げています。平井真帆


 イベントを主催したのは、心身に障害を持つ人たちによるパフォーマンス集団「こわれ者の祭典」。メンバーの経歴は、うつ、幻聴・幻覚、過食症、引きこもり、リストカット(自傷行為)、性同一性障害などさまざまです。

 障害を抱えてきた当事者が「病気でどう苦しみ、どう回復したか」、その体験をユーモアたっぷりに交えて語る催しを全国で開催しています。

どこも満員

 当事者だからこそ語れるリアルなトークや、詩の朗読などのパフォーマンスが若者の人気を呼び、イベント会場はどこでも満員。会場を埋め尽くす大半は10代、20代の若者です。

 イベントの様子はネットラジオ「オールニートニッポン」で放送され、常時、聞くことができます。

 「イベントの目的はただひとつ。今まさに自殺を図ろうとする人が、ラジオを聞いて1人でも、その手を止めてくれたら」。「こわれ者の祭典」代表で作家・詩人の月乃光司さんは、よどみなく語ります。月乃さんが真剣に訴えるのには理由があります。

 月乃さん自身、いじめによる不登校、引きこもりから、アルコール依存症に陥り精神科病棟に3回入院。リストカットをくり返し、薬物の大量摂取で病院に担ぎ込まれたことも。27歳のとき、アルコール依存症の自助グループに出会い、以来、酒は口にしていません。

仲間いれば

 「18歳くらいから30歳になる前まで、毎日死にたいと思っていた」と語る月乃さん。自分の人生は終わり。この先、良いことなど何ひとつ無い、と。「でも、今は生きていてよかったと思える瞬間がある。最悪の状態だと思っても、時間が解決してくれる。死ぬのを、ちょっとだけ待ってみてほしい」

 「今の日本は皆、誰でも生きづらい。生きづらかったら『生きづらい人たちの共同体』をつくろう」。月乃さんら、メンバーはステージから呼びかけます。「仲間がいれば、生きていける。あなたは決して1人じゃない」

 問い合わせ「こわれ者の祭典」070(6456)9262


 イベントでは、メンバーが自らの体験をつづった自作の詩をギターに乗せて朗読するなどのパフォーマンスを行っています。

自分を守るのは自分

 アイコさん 幼い頃から、親に暴力を受けてきたストレスで、強迫観念や妄想に悩まされ、学校に行けなくなりました。家で料理をしていたとき、ネギを切っていた包丁を手首に当て、リストカット。

 あるとき、「ぼろぼろになって苦しみながらも、ここまで生きてきた。自分を守るのは自分しかいない」と気がつきました。「今、死にたいと思っても、ここまで生きてきた自分を認め、守ってあげて。自分で自分を傷つける必要はない。ダメな自分を仲間に見せることで楽になるから」と、訴えます。

一人じゃないから

 Kaccoさん(イラストレーター) 28歳のときに、そううつ病、摂食障害、パニック障害と診断され、2度の長期入院と5年間の引きこもり生活を経験。「死にたい衝動をごまかすために」酒を飲み、ウイスキーのビンを投げ、その破片でリストカットしたことも。

 立ち直るきっかけは、「イラストをかき始めたこと」。自殺が未遂に終わったからこそ自分は今ここにいる、と語ります。「仲間がいない、だれにも必要とされていないと孤独を感じてる人に言いたい。絶対にそんなことない。1人じゃないから、大丈夫だよ」


お悩みHunter

就活がうまくいかず自分に自信持てない

  就職活動が思うようにいきません。4つとも落ちてしまいました。大学院に行って、自分に自信をつけたほうがいいかなと思うのですが、親は反対しています。このままでは、どんな会社でも落ちるような気がするんですが。(21歳、女性、東京都)

なにをしたいか再点検

  これは辛いですね。自信をなくされたのですね。でも、わからないことも多いです。

 最大の疑問は、なぜ4つとも落ちたのかです。大手ばかりに挑戦したのか、高倍率の職種だったのか。あるいは、面接での失敗なのか。原因さえわかればしめたもの。4つなら落ちたうちにも入りません。戦術を立て直せばまだ、十分間に合うからです。

 また、大学院へ行けば、なぜ自信がつくのかもわかりません。大学院は就職に不利と言われていたり、博士を出ても就職先がみつからないのが日本の悲しい現実。よほど目的意識が強固でないと、かえって自信を喪失しかねません。

 それに、なぜ「どんな会社でも落ちる」と思うのですか。とりわけ「どんな会社」という表記が引っかかります。まるで会社を大学のように、ランク付けして見ていないでしょうか。就活中の学生にとって、希望の会社はこれぞ!とホレ込んだ、将来にわたって自分が活躍する舞台となるところ。「うちの社」「わが社」と自然に愛社精神が湧いてくるものです。

 この際、もう一度自分は何をしたいからどんな仕事に就きたいのか、自分の性格や特性も考慮して再点検すべきでしょう。大学の就職課や先輩に相談するのも一つです。

 自らの社会的有意味性を何に求めるのか、煮詰めるべきかもしれません。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp