2008年5月18日(日)「しんぶん赤旗」

米兵犯罪の裁判権(62〜63年)

日本が9割放棄


 日本側が裁判を行うべき米兵犯罪のほとんどで日本側が裁判権を放棄している実態が、一九六〇年代の米軍当局の統計から明らかになりました。

 国際問題研究者の新原昭治氏がこのほど、米国立公文書館で入手した米陸軍法務局作成の統計資料(一九六二年十二月一日―六三年十一月三十日、沖縄を除く在日米陸海空軍の合計)によると、次のような状況になっています。

 ―日本の裁判に付されるべき犯罪三千四百三十三件のうち、日本側が裁判権を保持し手放さなかったのは三百五十件で、全体の10・2%。

 ―米軍が日本に対し裁判権を譲るよう請求した事件(二千六百二十七件)のうち、日本から放棄を勝ち得たのは二千四百四十八件で、全体の93・2%。

 新原氏は、「米国の同盟国でも、トルコでの裁判権放棄はゼロだったとされている。日本は他国と比べて裁判権放棄の比率がきわめて高い」と指摘しました。


解説

背景に密約の存在

 新原氏は十七日の講演で、本来、日本に第一次裁判権があるはずの米兵犯罪で、日本が裁判権を放棄している背景には、一九五〇年代以来の日米密約があると指摘しました。

 この密約の存在については、多数の米政府解禁文書が言及しています。一九五七年十一月にフランク・ナッシュ米大統領特別顧問がアイゼンハワー大統領に提出した報告「米軍の海外軍事基地・付録」は、「秘密覚書で、日本側は、日本にとり物質的に重大な意味をもつものでない限り、第一次裁判権を放棄することに同意している」と明言し、密約の存在と内容を確認しています(新原昭治編訳『米政府安保外交秘密文書』)。



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