2008年5月18日(日)「しんぶん赤旗」
主張
公務員制度改革
正すべきは政官業の癒着構造
「国家公務員制度改革基本法案」が審議入りしました。福田内閣と自民・公明の与党は、同法案を重要法案に位置づけ、今国会で成立させる構えです。
「基本法案」は、「内閣人事庁」の創設などを盛り込んでいます。問題にしなければならないのはこの法案が、求められている公務員制度改革に応えるものになっておらず、むしろ逆行する内容だということです。
長年の自民党政治の弊害
公務員制度をめぐって第一に問われているのは、自民党政治のもとでつくられた政・官・業の癒着構造をいかに改革するか、です。
法案は、「官民の人材交流を推進する」「官民の人材の流動性をたかめる」として、職員の官と民間の交流を広げるものです。昨年六月には安倍内閣が関連法を成立させて「天下り・天上がり」を自由化しており、いっそうの癒着が懸念されます。
日本共産党の塩川鉄也衆院議員が、原子力安全委員会事務局の規制調査官ポストが原発会社の「指定席」になっていることや、総務省が委託した官民交流に対する意識調査で民側の狙いが「新たな『ビジネス機会』の創出」とあることをあげて規制強化を迫ったように、政・官・業の癒着構造にメスを入れるべきです。
この間、建築偽装や食品偽装、「消えた年金」などの問題が次つぎに明るみに出ました。国民の安全・安心をないがしろにした事態を引き起こしたのは、利潤第一の大企業・財界のために規制緩和をすすめてきた自民党を中心とする政権与党に大きな責任があります。
公務員は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(憲法一五条)と規定されているように、主権者である国民、公共の利益のために、その職務の遂行に全力をあげることができるよう公務員制度を見直すことが不可欠です。
法案は、「政務専門官」以外の公務員と国会議員との接触規制を設け、国会による官僚の監視機能を封じ、内閣が幹部職員を一元管理する人事庁の設置を盛り込んでいます。公務員を官邸と政権与党、財界という一部勢力への「奉仕者」に仕立て上げるものです。国民による監視と国会の行政監視機能の強化こそ必要です。
公務員が全体の奉仕者としての役割を果たすのに欠かせないのは、公務員自身の労働基本権の回復です。
日本の公務員は戦後、六十年にわたってストライキ権や労働協約締結権を奪われるなど、労働基本権を著しく制限されてきました。政治活動も禁止されています。公務員の労働基本権の速やかな回復は、公務員制度改革の要となるものです。
労働基本権のはく奪は、ILO(国際労働機関)が国際労働基準に反するとして、日本政府に三回も勧告して是正を求めている緊急課題です。労働協約締結権は政府の調査会さえ「付与」するよう提言しています。
政府与党が公務員制度改革をいうなら、法案に労働基本権の回復を明記すべきです。公務員の労働基本権と政治的市民的自由の回復は、憲法の立場からも、行政のゆがみをチェック・改革するためにも緊要です。
権利回復と労働条件改善
日本共産党は公正中立で民主的・効率的な行政を実現するために奮闘してきました。一九八〇年には「官公労働法」も立法提案しています。
国民は汚職・腐敗と無縁で住民本位の行政への改革を切望しています。そのためには公務員が全体の奉仕者として働けるよう、権利回復と労働条件改善が不可欠です。