2008年5月17日(土)「しんぶん赤旗」

“学歴”格差が命に影響

大卒と高校中退者 死亡率4倍差

米で調査


 【ワシントン=西村央】所得格差の広がりが深刻化する米国で、社会経済的な格差が死亡率にも影響しているという調査結果が明らかになりました。白人男性の場合、大卒以上と高校中退者では死亡率で四倍以上の差があります。保険の有無など医療へのアクセスや健康意識の差が反映しているといいます。

 調査結果は、医療や科学分野での論文をインターネット上で発信している『プロス・ワン(PLoS One)』の最新の論文「一九九三―二〇〇一年の米死亡率にみる社会的経済的不平等の広がり」で発表されました。

 これによると、高校中退以下の白人男性では人口十万人当たりの死亡率は一九九三年の八三六・八から二〇〇一年の九三一・一へと11・3%増加しています。これにたいして大学卒業以上の白人男性では二八四・七から二一二・七へと25・3%減少しています。両者の死亡率は二〇〇一年には四・四倍にも開いています。

 黒人男性では同じ比較で、高校中退以下が一二五三・五から一二八三・一へと2・4%増加、大卒以上では五九六・二から三八一・六へと36・0%減少しています。

 女性の場合もほぼ同様の傾向を示しています。

 こうした動向について論文では、「死亡率にみる社会経済的な不平等は増加し続けている」と指摘。その背景として「低学歴層の場合、収入は少なく、医療保険加入率も少なく、安定した雇用にも就いておらず、健康意識も低い」ことをあげています。さらに、喫煙、肥満、高血圧、HIV感染などのリスク要因も多いとしています。

 米国では低技術や技術のない労働者が生産現場からも排除され、低賃金のサービス産業などに従事する傾向が強まっています。失業率でみても学歴による差は顕著で、労働省の今年四月の雇用統計でみると、高卒以下は7・8%と全米平均値5・0%を大きく上回っています。これにたいして大卒以上は2・1%と平均の半分以下です。

 雇用主が医療保険の費用負担に耐えられない中小企業労働者、失業状態の人が、民間医療保険の高い保険料を払えずに無保険になるケースは増えており、四千七百万人が「命の綱」ともいえる医療保険なしとなっています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp