2008年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
石綿被害172人提訴
建設労働者ら 国と企業の責任問う
建設現場でアスベスト(石綿)被害を受けたとして東京、埼玉、千葉の建設労働者と遺族ら百七十二人が十六日、国と建材メーカー四十六社を相手取り、一人三千五百万円、総額六十六億円の慰謝料を求める訴訟を東京地裁に起こしました。
建設現場の被害で国と企業を訴えるのは初。石綿の大半は建材に使われたため建設労働者の被害増が危ぐされており、政府と企業の姿勢が問われることになります。
原告は、東京土建一般労組など首都圏の組合員ら。六月末には神奈川の労働者と遺族四十一人が横浜地裁に提訴します。
訴状によると、原告は一九六〇年代から大工などでビル建築や解体作業に従事。建材に含まれる石綿を吸引し肺がんや石綿肺などになりました。
石綿の発がん性は一九五〇年代に明らかになっており、国は七〇年までに禁止措置をとるべきだったと指摘。国が全面禁止したのは〇六年で、国民の健康と安全を守るため被害を防ぐ義務に違反していたとしています。
メーカーにも危険性を警告せず、製造を続けた責任があり、「国と企業が一体となって利潤追求を優先させ、石綿建材の使用を推進してきた」と強調しています。
記者会見した原告団長の宮島和男さん(78)は、「危険性を周知していれば、建設労働者が亡くなることもなかった。建材として推奨した旧建設省の責任を認めてもらいたい」と話しました。
被害者のうち八十二人が亡くなっています。肺がんで亡くなった夫の遺影を抱えた浅野初枝さん(70)は、「石綿がこんなに危険とは知らずに亡くなった。恨みをはらしたい」と訴え、ハンカチで涙をぬぐいました。
弁護団長の小野寺利孝弁護士は「国と企業の公的責任を明らかにし、謝罪と補償、今後予想される被害の根絶を実現したい」と強調しました。