2008年5月16日(金)「しんぶん赤旗」
米海軍
中南米にらむ
第4艦隊 58年ぶり再設置へ
【メキシコ市=島田峰隆】米国が中南米カリブ海地域で活動する米海軍第四艦隊を五十八年ぶりに再設置すると発表したことに各国で警戒感が広がっています。対米自立と相互協力を強める中南米諸国ににらみをきかせることが狙いといわれます。
四月下旬の米国防総省の発表によると、第四艦隊は七月一日から活動を開始。中南米地域の米軍艦、航空機、潜水艦を指揮します。第四艦隊は、第二次世界大戦中の一九四三年にドイツ軍の攻撃に備えて創設されましたが、一九五〇年に廃止されました。
米海軍は、麻薬取り締まりや不測の事態への対応などが目的だと説明、英BBC放送に対し、「南方軍はこれまでも艦隊のように行動しており、作戦上は何も変わらない」と語りました。
新自由主義の克服を目指す中南米諸国は、外交、軍事面で対米自立を強めています。特に南米諸国は、ブラジルの提唱で独自の安全保障機構をつくろうとしています。
識者は、第四艦隊の再創設はこうした動きににらみをきかせることが狙いだと指摘します。
ワシントンにある研究所「西半球問題評議会」のサンチェス研究員はBBCで、イラクやアフガニスタンに注意を集中していた米国が「中南米地域での復活」を狙っていると強調。「中南米諸国が軍備を増強しても米国とは比較にならないことを示すためだ」と述べました。
キューバ防衛情報研究所のカルボネル副所長はメディアに対し、「キューバだけでなくベネズエラ、ニカラグア、エクアドルなどの米国にとって不愉快な国への脅迫だ」と語りました。
ブラジルのジョビン国防相は九日、「ブラジル領を監視するのはわれわれだ」と語り、米海軍が許可なしに同国領海を移動することを許さない姿勢を示しました。ボリビアのモラレス大統領は五日、「米国は中南米への侵略を狙い続けている」と批判。キューバのカストロ前議長は同日付の論評で、「ベネズエラと中南米地域への警告だ」と糾弾しました。
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