2008年5月13日(火)「しんぶん赤旗」
空自が軍事法廷研究
改憲と連動 民間人処罰も視野
名古屋高裁でイラク派兵の違憲判決をうけた航空自衛隊が、憲法の平和原則ではなく“軍の論理”を優先させる「自衛隊版軍事裁判所」設置の研究に着手していることが、十二日までに本紙が独自に入手した内部資料でわかりました。自民党などの改憲案では「軍事裁判所」の設置を提案しており、自衛隊の動きはこうした流れと軌を一にしたものです。
内部資料は航空自衛隊幕僚監部法務課が部内向けに発行している論文誌(非公開)の『法翼』(二十三号・二〇〇四年)に掲載されている論文。表題には「日本国憲法下における自衛隊裁判所制度の導入と可能性」とあります。
執筆は防衛庁(当時)事務官。航空自衛隊が中央大学大学院法学研究科に業務派遣、その研修論文です。
論文は「近い将来憲法改正が現実味を増し、憲法上軍隊ではない自衛隊が軍隊として認められる可能性も出てきている」と改憲に強い期待を示しています。
そのうえで当面の措置として自衛隊裁判所制度導入の必要性について「自己完結型の武力組織」である自衛隊の「軍紀・戦力侵害の防止」「迅速な裁判の確保」を強調しています。
これは「自衛隊の海外における長期・大規模な国際貢献活動」など海外派兵の本格的拡大への備えです。
海外での軍事技術、防衛秘密や国際法などにかかわる軍事知識を必要とする刑事事件の処理は「一般裁判所では困難で、軍事知識が蓄積可能な専門裁判所が必要」と強調、“軍の論理”が優先できる軍事法廷への期待を込めます。
自衛隊裁判所は自衛隊員の規律違反とともに「戦力(防衛力)侵害の防止」などに関する刑事事件を対象にしています。施設の損壊や軍事秘密の漏えい罪などで自衛隊が民間人を「軍の論理」で裁く軍事法廷になる危険性をはらんでいます。
同裁判所は裁判員制度の導入を提言。職業裁判官一人に、自衛隊内から無作為に抽出した四人の隊員による裁判員で構成するとしています。
同論文について防衛省は「個人的なもので、公的見解ではない」(広報課)としています。しかし法務課長は論文誌の「はしがき」で「興味深い内容となっている」と称賛の言葉をよせています。