2008年5月12日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

笑顔のコミュニティーへ

自治会活動活発に


 今日、地方の時代、地域分権 が強調され、そのコミュ ニティーの一翼を担う自治会・町内会の果たす役割が見直されつつあり、その活動に期待も高まっています。 東京と名古屋の二つの自 治会の活動を紹介します。


「住環境守る」と全力

東京・世田谷区 成城自治会

 東京都世田谷区の成城(せいじょう)自治会は一九二八年、自分たちの町は自分たちの手でつくるという意味をこめて「自治会」という名で創立しました。戦時中の中断の期間を除いて、現在の月刊誌『砧』は、一九五二年に創刊しこの五月で六六三号を迎えています。古いページをめくると、柳田國男、ひらつからいてう、野上弥生子、新しくは大江健三郎、小沢征爾、山田洋次などの名に出合います。

 成城の町は、大正期に成城学園がこの地に移転したことから造られた学園都市です。国分寺崖線にふちどられ、どこからでも富士山が見られる高台にあるという自然の利に加えて、住民の手で桜並木、イチョウ並木、碁盤の目の道路、生け垣と角(すみ)切りの町をつくりあげ、さらにそれらを大切に守り育ててきた歴史をもつ町です。

住民運動から「成城憲章」へ

 が、時代とともにこの街も開発の波に洗われ、大型マンション建設や土地の細分化で緑の減少が目立ち、通過車の量がふえ、静穏とはほど遠い町に変化しはじめました。

 こうした中で、都道の拡幅に反対する住民運動や、景観を壊す大型マンション建設に抗議する住民組織の誕生、緑地協定、建築協定など、次々と自らを守る住民運動がおきてきました。自治会は住環境を破壊することに反対する運動を積極的に応援し、区行政にも「意見書」というかたちで自治会としての態度表明をしてきました。こうした住民の声、運動を背景にして二〇〇二年、「成城憲章」が策定されました。

 自治会創立当時から脈々と受け継がれてきた「自治」の精神が「成城憲章」で具体化されたような気がします。

 成城自治会は現在、全八千八百世帯(都営住宅には独立した自治会があります)のうち約60%を組織しています。さらに会員拡大のための委員会が活動しています。

暮らしの道へマップづくり

 区行政とは防災や防犯にそなえて連携、協働することはありますが、基本は住民どうしの自治と共生にあります。最近では町づくりの一環として区に対して地域風景資産選定への働きかけをしたり、美化運動として自治会役員が中心となり並木の落ち葉はきを商店街や近隣の小中高の生徒の参加も得て行っています。また、昨年は通過交通車の増加にともない交通事故の多発や安心して歩く道が少なくなっていることの心配から、暮らしの道づくりのためのアンケートを住民からとり、それをもとに成城マップづくりをし、好評を得ています。

 しかし、各団体の住民運動や「成城憲章」を盾にして町を守ってきたつもりですが、大型マンション建設や宅地の細分化の勢いにはなかなか歯止めをかけられません。公有地売買の情報は住民より数倍も早く大企業はキャッチします。住民が要望するころには「民間の手にわたっています」という具合です。「憲章」は足がかりの一つになっているにすぎません。(道家暢子・成城自治会員)


ふれあい会食や相談会

名古屋市緑区 森の里荘自治会

 名古屋市緑区の森の里団地は、一九七九年から八〇年に入居が始まった全戸数千二百五十二戸の市営住宅です。ここの入居者で構成されているのが森の里荘(もりのさとそう)自治会です。二十九年間の歴史を紡ぎ、ほぼ100%の組織率を誇っています。

子どもたちに思い出づくり

 住民同士の親睦(しんぼく)と連帯、子どもたちのふるさとへの思い出づくりを目的とした夏まつりや秋まつりなどの多様なイベントをはじめ、青少年の健全育成、防火防犯活動、高齢者福祉の増進、豊かで快適な環境の創造など、地域の課題解決に持てる力を精いっぱい発揮してきました。 毎月一回の「ふれあい喫茶」はすっかり定着しました。

 高齢者が小学六年生と一緒に食事を楽しむ「ふれあい会食会」は年三回、「閉じこもり」や「孤立」を防ぐ「シルバーサロン」は月一回続けています。七月には子どもたちの「流しソーメン」、夏まつりでは卓球を中心に「中高生の居場所づくり」の一歩をふみだしました。

 そして何よりも住民の命と暮らしを破壊する制度改悪に対しては、役員会での民主的な討議と合意の上で反対運動もしてきました。後期高齢者医療制度反対の署名、公営住宅の入居収入基準引き下げに反対する国会請願署名、私学助成や学童保育の充実の署名などです。

実利実益守る講演の依頼も

 住民の実利実益を守ることも自治会の重要な役割ですから、「生活なんでも相談所」を開設し、多様な相談活動も展開しています。毎月五―六件の相談があります。

 こうした森の里荘自治会の活動が一定評価されて、各自治体や諸団体から年間十件程度の講演の依頼や、シンポジウムでのパネリストの要請がきています。

 地域は多様な思想信条と価値観が交錯した住民で構成されています。そのため自治会・町内会が特定の政党や宗教を支持したり、それを住民に押しつけたりすることは自滅行為にあたります。

 安心できる安全な地域社会の創造と、快適で笑顔あふれるコミュニティーづくりが、自治会・町内会に課せられた役割です。この一点で住民のコンセンサスを得て活動する自治会・町内会が健全に発達する条件です。(小池田忠・森の里荘自治会長)


 《森の里荘自治会の基本コンセプト(観点)》 年間活動方針にあるように(1)自分たちの地域は自分たちでつくる自覚的住民自治組織(2)その活動は住民の福祉(しあわせづくり)に連動する創造的改革的な住民自治組織(3)そして地域内諸団体をはじめ行政とも対等平等の関係で協働する自立(律)的住民自治組織―です。


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