2008年5月12日(月)「しんぶん赤旗」
2008 自民党の風景
KYショック 五里霧中
後期高齢者医療制度
山口2区補選の惨敗
“背水の陣内閣”を自らうたいスタートを切って七カ月余。福田康夫内閣は、後ずさりを重ね“土俵際”に追い込まれています。胡錦濤中国国家主席の訪日後も依然として政権のかじ取りに四苦八苦する福田政権。支える自民党はいま―。
「大型連休後もKYショックが自民党内を覆っています」。自民党本部関係者が党内の空気を語ります。
支持率下落
KYとは、はやり言葉の「空気(K)が読(Y)めない」ではありません。後期高齢者医療制度(K)への猛反発と先月二十七日の衆院山口2区補選(Y)の惨敗のダブルショックをさしています。大手紙の世論調査で福田内閣支持率も20%を割り込み、自民党内の意気はあがりません。
「自民党支持率も大きく下落している。打開の糸口は見えてこない。局面打開には福田首相の解散権行使しかないが、解散しても勝てる見通しはゼロ。過半数確保も現状では難しい。このままでは福田内閣と自民党政権の抱き合い心中だ」
自民党三役経験者は苦り切った表情です。
自民党に大手広告代理店の電通は「二〇〇八年コミュニケーション戦略」を持ち込みました。二月上旬のことでした。福田自民党の浮上を賭ける広報戦略プランです。
そのポイントは「生活者の立場を考え、それぞれにあった政策を打ち出し、現実的な政治をしているのは自民党」とアピールすることを助言。福田首相については「首相が見せる決断、英断を演出」することがカギとアドバイスしています。
ところが肝心の首相本人に国民向けの「決断、英断」をする心積もりはまるでないようです。
一般財源化を公約しながら、道路特定財源を十年間維持する道路整備財源特例法改定案は無傷のまま、十三日に衆院で再議決を強行する構え。後期高齢者医療制度にかんしては自民党内から見直しの声が強く、堀内光雄元総務会長が「いったん凍結してゼロベースで国民的議論を」と『文芸春秋』六月号で異例の提言を行い、福田首相に直接説明しました。が、首相に国民の声を受け入れる姿勢は、いまのところ見えません。
「我々自民党も、野党の声を国民の声として柔らかく吸収した戦後保守の伝統に倣い、懐の深い対応をすることを誓う」。与謝野馨前官房長官と麻生太郎前幹事長は、十日発売の同誌六月号に寄稿した「共同提言」で戦後自民党の特質にふれました。
“ポスト福田”に名前があがる両氏ですが、提言には、道路特定財源廃止、後期高齢者医療制度の撤廃という国民の声を吸収しようということばは見当たりません。逆に「消費税十%にして社会保障目的税とし」と新たな国民負担増を求めています。
「要望をくみ上げない自民党政権なら非自民政権でもいいじゃないかと多くの人がごく自然に思いはじめた。政権が自民党の専売特許ではなくなったことを意味する」。自民党関係者は語ります。
描けぬ明日
自民党と福田内閣の苦境は、国民を基盤にして日本の明日を描けなくなった自民党路線そのものがもたらしているものです。
自民党山崎派が四月二十三日に発表した政策提言の取りまとめの議論の席上、閣僚経験者が発言しました。「どんな国を日本はめざすんですか。国際社会の中における日本がどんな位置づけでいるのか。このことについてのメッセージが全然ないことが(自民党の政治が)漂流している最大の原因だろう」
一方、金融界出身の財界人は「経済界はグローバル化の流れに安易に便乗してきたが、その結果、米国のサブプライムローン(低所得者向け住宅融資)の破綻(はたん)に起因する世界市場の混乱のなかで右往左往だ。財界首脳陣は日本経済のかじをどうとっていいのかわからない状況だ」。
財界も福田自民党も五里霧中です。
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