2008年5月9日(金)「しんぶん赤旗」
「戦闘行為」参加は違憲
連邦憲法裁判決 イラク戦の偵察活動
ドイツ
ベルリンからの報道によると、ドイツ連邦憲法裁判所は七日、二〇〇三年のイラク戦争開始直前から直後にかけて北大西洋条約機構(NATO)軍のトルコ上空偵察活動にドイツ軍が参加したのは、連邦議会(下院)の承認がなく違憲だとする判決を出しました。
当時の社会民主党と90年連合・緑の党のシュレーダー連立政府は米主導のイラク侵略戦争に反対していましたが、同年二月から四月にかけてトルコ上空でのNATO軍の空中警戒管制機(AWACS)による作戦にドイツ空軍兵士を参加させました。同政府はこれは通常のNATO作戦への参加だとして下院の承認を求めませんでした。
これに対して保守野党の自由民主党(FDP)は、戦闘行為への参加であり、議会の承認が必要だとして、違憲訴訟を起こしていました。
連邦憲法裁は、「交戦の可能性が具体的である場合、政府は下院の承認を求めなければならない」と判断。そのうえで、「イラクでの戦闘の開始は一般的に予測されており、NATOは遅くとも〇三年三月十八日までにはこうした交戦の態勢に入っていた」と認定し、「交戦の可能性は単なる抽象的なものではなかった」と断定しました。
判決はまた、戦争か平和かの選択は下院の権限であることを確認しました。
解説
海外軍事活動に歯止め
ドイツ連邦憲法裁判所は七日、イラク戦争開始前後の時期におけるドイツ軍の北大西洋条約機構(NATO)軍の偵察活動への参加を違憲だとする判決を出しました。
ドイツの憲法に当たる基本法は、第二次大戦時のナチスによる外国侵略への反省から第二六条で「侵略戦争の遂行を準備する行為は違憲である。これらの行為は処罰される」と規定。八七条a項でドイツ軍の任務を「防衛」のみに限定しています。
しかし、一九五五年のドイツのNATOへの加盟で「防衛」の定義がNATO域内に拡大。東西ドイツ再統一後の一九九四年に連邦憲法裁判決でこの定義がさらに拡大されました。これにより、ドイツの「防衛」は、国境を守るだけでなく、危機への対応や紛争防止などの行動も指すものとされ、下院の議決による事前承認でNATO域外への派兵が認められることになりました。
この判決後、国連の平和維持活動(PKO)への参加や旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナの欧州連合軍(EUFOR)、コソボの国際治安維持部隊(KFOR)、アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)などドイツ軍の外国での軍事活動が活発化しています。
今回の連邦憲法裁判決はこうした動きに歯止めをかけるものです。とくにNATO域内であるトルコ上空での軍事活動をも規制するものとして注目されています。(夏目雅至)
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