2008年5月6日(火)「しんぶん赤旗」
主張
宇宙基本法案
戦争態勢を強めることになる
自衛隊の軍事衛星保有を公然と認め、宇宙軍拡競争に日本を引き込む宇宙基本法案の審議が連休明けにも始まろうとしています。
自民・公明両党が昨年国会に提出していた法案を一部修正して、自民・公明・民主三党の共同提案とすることに民主党が合意しました。宇宙基本法案のねらいは、国会決議と宇宙航空研究開発機構法が明記し、政府が確認してきた、宇宙の軍事利用を禁止するという制約をとりはらい、アメリカのように、日本が宇宙を戦争のために自由に利用できるようにすることです。憲法の平和原則に違反するのは明白です。
海外での戦争への備え
国会決議や宇宙航空研究開発機構法は、宇宙開発利用を「平和の目的に限り」と明記しています。これを基本に宇宙開発や研究を進めてきたことが、日本への国際的な高い評価につながっています。
「平和の目的に限り」とは「非軍事」(一九六九年五月八日木内四郎科学技術庁長官=当時)のことです。自衛隊は本来、軍事偵察衛星でさえ持つことが「できない」(八三年五月角田禮次郎内閣法制局長官=当時)のです。
宇宙基本法案は、「非軍事」の原則を破棄して、偵察衛星、早期警戒衛星、軍事通信衛星などの保有と宇宙の軍事利用に道を開くものです。
自公民三党案は、「平和の目的に限り」を排除しています。「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ」と書いても、肝心の原則である「平和の目的に限り」を捨て、軍事利用に道を開くのでは、憲法を守ることにはなりません。
「国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する」との規定は、とりわけ重大です
宇宙基本法案を準備してきた自民党の「日本の安全保障に関する宇宙利用を考える会」は、二〇〇六年にだした文書で、宇宙利用が必要なのは、「弾道ミサイル防衛」だけでなく、イラクやインド洋での活動のように、「自衛隊の海外活動を支える」ためとのべています。イラクなどで衛星情報をもとに無差別爆撃をくりかえしている米軍と同じことを、自衛隊にやらせる考えです。イラク派兵を憲法違反とする名古屋高裁判決が確定判決になったいま、海外派兵と結びついた宇宙の軍事利用は許されるはずはありません。
さらに問題なのは、宇宙基本法案が宇宙開発利用に秘密保全の網をかぶせようとしていることです。
宇宙基本法案は、「宇宙開発利用に関する情報の適切な管理のために必要な施策を講ずる」とうたっています。宇宙開発利用の情報を秘匿(ひとく)するため、法的な措置をとるというのは重大です。日本の宇宙科学や技術の成果が秘密のベールにつつまれるのは避けられません。法案の情報管理規定が、「自主・民主・公開」の宇宙開発利用の原則と両立しないのはあきらかです。
「平和の目的に限り」との国会決議はいまも生きています。自公民三党は自己否定につながることをやめるべきです。
国民犠牲を許さない
高額な衛星を何機もうちあげ、更新も必要になる宇宙の軍事利用は、それだけでも軍事予算を肥大化させます。軍事利用に道を開くのは軍需産業を大もうけさせるためでもあります。国民生活予算を削り、軍事予算を肥大化させるなど許せません。
日本を宇宙軍拡に引き込み、国民犠牲を強める宇宙基本法案を阻止することが重要です。