2008年5月5日(月)「しんぶん赤旗」
75歳で医療差別の厚労省が「人生85年ビジョン」
「年齢で輪切り概念を見直せ」
「年齢で輪切りにする既成概念を見直すべき時期を迎えている」―舛添要一厚生労働相が主宰する私的懇談会「人生85年ビジョン懇談会」がこんな内容を盛り込んだ報告書素案を四月三十日まとめました。
厚労省は、七十五歳以上という年齢で医療を差別する後期高齢者医療制度を導入した責任官庁。素案には後期高齢者医療制度への言及は一切ありませんが、同じ官庁内から「年齢で輪切りにする」ことへの批判が投げかけられる皮肉な格好となりました。
同懇談会は昨年十二月に発足。平均寿命が男性七十九歳、女性八十五・八歳という「人生八十五年時代」のなかで、人生の「基盤づくり」などを検討・提言するために議論を重ねてきました。
素案では、「国民一人ひとりが健康で充実した暮らしを送れるよう人生をデザインし直す」ことなどを提言しました。「いくつになっても働ける社会づくり」の項では、「年齢を基準にしない社会づくり」を強調。「特に、制度的に一定年齢以上の者を一律に『高齢者』として扱うことについて…国民的議論を深めていくべきである」と提起しています。
また、「人生設計のデザインし直しのための提言」では、「もっぱら年齢によって物事を輪切りにする考え方にとらわれることなく、『生涯現役』の社会づくりを進め、自分らしい『花のある生き方』を広げていこう」ということを「基本的考え方」として押し出しています。
医療制度では、七十五歳という年齢で機械的に切り離し、国民から「うば捨て山だ」「長生きもできない」と怒りを買う後期高齢者医療制度を導入しておきながら、「人生設計では年齢にとらわれるな」と提言されても、とても国民の心には響きません。(宮)
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