2008年4月30日(水)「しんぶん赤旗」

食の異変

食料自給率

英、60%でも危機感

輸入依存に批判の声


 【ロンドン=岡崎衆史】英国の食料自給率は、四割未満の日本を上回る六割です。それでも、自給率の低下傾向に危機感を示す声が出ています。

 「現政権は(農産物の)国内の需要と供給の差を、グローバル化や外国市場に依存すればいいと考えている」。野党第一党・保守党のキャメロン党首の政府批判です。二月にロンドンで開かれた全国農業者組合(NFU)の創設百年記念大会で約千人の組合員を前にしての演説でした。

 英国は二度の世界大戦で食料難に陥った経験から、第二次大戦後40%台だった食料自給率を一九九一年には75・3%まで引き上げました。農産物の価格を保障し農家の生活を安定させたことによるものです。

 しかし、労働党が保守党から政権を引き継いだ九七年には70%を切り、二〇〇七年には60・6%になりました。

 キャメロン党首は、自給率低下の要因が政府の国内農業軽視と輸入依存の放置にあるとし、これまでの政策を続けることはできないと主張。また、(1)中国など新興国の富裕化による食生活の変化(2)気候変動による農地の減少(3)バイオ燃料の増大―を食料危機の構造的要因として挙げ、「世界から豊富な食料が得られる時代は終わる」と警告しています。

 一方、英政府は、国際的な解決のための枠組みづくりとして、価格抑制と最貧国救済に向け、主要国首脳会議(G8)や欧州連合(EU)と連携を強めるとしています。しかし、食料増産を国内でどう進めるかについては、方向性が明らかではありません。NFUのケンダル会長は、「政府が世界の食料不足で真剣に役割を果たしたいのなら、英国で農産物増産を支援するための一歩から始めるべきである」と訴えています。


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