2008年4月29日(火)「しんぶん赤旗」

主張

イラク駐留恒久化

米軍撤退こそ平和を実現する


 イラクの“求め”による“協力関係”との装いで、ブッシュ米政権が同国への米軍駐留の恒久化に向けた布石を打っています。いくら装いを変えようとも、駐留恒久化は占領の恒久化であり、イラクに独立と平和をもたらすものではありません。そればかりか、米軍の引き続く駐留はイラクを中東と周辺地域をにらんだ出撃拠点に変え、世界を一段と危険にさらすものです。

「永続的関係」に向けて

 米国が国連憲章に反してイラク侵略を開始して五年。イラク国内ではなお戦闘が続き、治安の回復も復興にも見通しが立っていません。

 米国は昨年十二月、国連安保理に多国籍軍のイラク駐留の一年延長を認めさせました。その前提として、期限延長はこれが最後だとし、今年末の期限切れによってイラクは主権を「完全に回復」するとともに、米・イラク関係は「正常化」するとしています。そのために、七月末までにイラクとの間で安全保障をはじめ政治、経済、文化にわたる包括協定を結ぶ計画です。

 ブッシュ米政権は、こうした計画を盛り込んだ「長期友好協力原則宣言」を昨年十一月、イラクのマリキ政権との間で調印しました。イラクへの「内外の脅威からの防衛」をうたった同宣言について、米政府は「イラク指導部は米国との永続的関係を求め、米国は民主イラクとの永続的関係を追求している」と説明しています。

 ゲーツ米国防長官は昨年六月、「米軍のプレゼンスが長期的、永続的なものとなるような取り決め」を追求していると述べており、米軍は恒久的駐留のための大規模な施設づくりも進めています。

 しかも、イラク側が駐留米軍の活動に制限を課すことは想定されていません。実際、英ガーディアン紙が四月に報じた米国とイラクとの秘密暫定合意は、米軍が来年以降もイラクで軍事作戦を行い、イラク人を拘束することができるとしています。

 ブッシュ大統領は四月半ば、イラクに展開する米軍を十四万人規模より削減しないとの方針を表明しました。イラク戦争を継続する体制を維持するだけでなく、イランへの脅しを強める中での方針であることも重大です。マレン米統合参謀本部議長は二十五日、イランについて核疑惑とともにイラク国内の武装勢力への「影響力」を指摘し、対イラン軍事行動の可能性に言及しました。

 米軍の駐留恒久化は、イラク国民はもとより周辺アラブ諸国の世論にも逆行しています。イラク国民の米軍に対する目は厳しいものです。イラク国民を対象に昨年行われた複数の世論調査によれば、外国軍の駐留に反対するとの回答が七割を超えています。

周辺諸国も厳しい目

 また、サウジアラビア、エジプトなどアラブ周辺諸国で三月に実施された世論調査によれば、イラクからの米軍撤退を望むとの回答が61%にのぼっています。こうした声を背景に、周辺諸国はマリキ政権との関係樹立に消極的です。クウェートで四月に開かれたイラク周辺国拡大会議でも、ライス米国務長官がてこ入れをはかったにもかかわらず、事態はさほど進展していません。

 米国防大学が四月に発表した報告は、米側はもとよりイラク民間人の犠牲や難民の大量流出にもふれて、イラク戦争は「大失敗」だったと指摘しています。米軍がイラクからすみやかに徹底することこそ、イラクの平和を切り開くものです。



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