2008年4月24日(木)「しんぶん赤旗」

主張

アナログ放送終了

3年後のいっせい停波は無謀


 地上波のテレビ放送をこれまでのアナログ放送からデジタル放送に切り替えるため、予定通り三年後の二〇一一年七月二十四日にアナログ放送を停止する動きが強まっています。政府は地域ごとの停止ではなく、全国いっせいとする方針を固めました。NHKと民放は近く、三年後には打ち切ることを告知する、文字スーパーやロゴを挿入する計画です。

 デジタル放送を受信するには専用のテレビやチューナーが必要ですが、その普及はすすんでいません。全国いっせいでの一方的な放送打ち切りは、国民の「知る権利」を奪うことにもなる無謀なものです。

大量の“テレビ難民”が

 テレビ放送はニュースや天気予報などの情報を入手するためにも、ドラマやスポーツなどを楽しむためにも、多くの国民にとってなくてはならない存在です。これまで地上波のテレビはアナログ放送と呼ばれる方法でしたが、一度にたくさんの情報が運べるなどの理由で、政府や放送局はデジタルと呼ばれる方法への切り替えを進めてきました。

 アナログとデジタルでは放送や中継の施設が異なるため、現在は準備ができたところからデジタル放送を始めており、すべての地域でアナログとデジタルが並行して放送されています。デジタルが放送されている地域でも、視聴者はデジタル用の受信設備を購入しなければデジタル放送を受信できません。

 三年後の二〇一一年七月二十四日から、デジタル放送に完全に移行するためには、まず全国にデジタル放送の電波が届くようにする必要があります。現在の見通しでは、三年後の七月になっても全国で三十万から六十万の世帯に、デジタル放送の電波が届きません。アナログ放送がいっせいに打ち切られれば、これらの世帯はその日からテレビが見られなくなる恐れがあります。

 さらに重大なのは、受信設備の普及の遅れです。ことし三月末までにデジタル放送が受信できるテレビやチューナーが普及したのは三千二百万台ほどです。デジタル専用のテレビはもちろん、二万円ほどに値下がりしたといわれるチューナーも安くはありません。低所得者などへの特別の対策がなければ、このままでは多くの世帯でデジタル放送が受信できない危険があります。

 山間部や高層住宅などで共同アンテナなどを使って受信している視聴者も、アンテナなどを取り替えなければデジタル放送が受信できません。どこでも巨額の工事費や高額なケーブルテレビ利用料などの負担が大問題になり、一部ではデジタル放送に切り替える前から、利用料が負担できないなどの問題が発生しています。デジタル放送の受信を確保する対策が不十分なままでのアナログ放送の打ち切りは、大量の“テレビ難民”を生むことが確実です。

放送打ち切り延期を

 もともと、地上波テレビをアナログからデジタルに切り替え、三年後にはアナログ放送を打ち切るという計画は、国民が十分納得していないのに、二〇〇一年の電波法改定に日本共産党以外の党が賛成してきめたものです。普及が遅れたアメリカでは、いっせい停止の計画そのものを延期しました。

 日本でもアナログ放送を中止する計画が間近に迫って、大きな問題をはらんでいることがいよいよはっきりしてきました。アナログ放送打ち切りの計画を延期して、すべての国民がデジタル放送を受信できるよう計画を根本から見直すべきです。


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