2008年4月23日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「思いやり」協定

成立強行は絶対に許されない


 米軍「思いやり」特別協定を三年間延長する「改正」案の参議院での審議がヤマ場を迎えています。

 参議院は「改正」案を否決する流れです。条約の否決は現憲法下で初めてです。しかし自民、公明両党は、衆議院の議決優先をたてに、衆参両院協議会を経て成立を強行する構えです。国民には後期高齢者医療制度を導入するなどの痛みをおしつけながら、米軍には「思いやり予算」を湯水のように投入する政府に、国民が怒りの声をあげているのは当然です。野党が参議院の多数を占めているのは国民の意思によります。政府・与党が参議院の決定を受け入れるのが筋です。

遊ぶカネまで負担

 「思いやり予算」を開始した一九七八年度の負担額は、基地で働く日本人従業員の福利費などに限られ、金額も六十二億円でした。それがいまや、戦闘と直接結びつく施設であろうと米軍人の遊興費であろうと、米軍人の給与以外は何でも血税で負担するまでになっています。二〇〇八年度の負担額は、特別協定分を含め二千八十三億円にのぼります。

 米軍地位協定は、米軍の維持に必要な「すべての経費」は「合衆国が負担する」と明記しています。それを日本が負担するいわれはまったくありません。三十年間にわたり、アメリカいいなりに「思いやり予算」を維持・拡大してきた政府の態度はあまりにも異常です。アメリカに廃止はおろか大幅削減を求めることもできない政府では、国民の利益を守れないのはあきらかです。

 日本の「思いやり予算」は世界でも異常です。米軍の駐留を認めている二十七カ国の負担額を合わせた総額の実に52%を日本が負担しています(米国防総省二〇〇四年度「同盟国の貢献度報告」)。これは他国に比べて、日本政府の自主性が欠如していることを示しています。アメリカが同盟国のなかで「最も気前がいい」というはずです。

 政府は「思いやり予算」を正当化するのに、米軍が日本を守っているからといっています。しかしこれは通用しません。在日米軍は「日本防衛」を任務にしていないからです。日本を世界各地に軍事介入するための戦略拠点にしているだけです。アメリカの世界政策の都合で日本に駐留しているのに、「日本防衛」だというのは事実に反します。

 しかも、沖縄の少女や女子中学生などへの米軍犯罪はあとをたたず、横須賀でも女性やタクシー運転手殺害事件など凶悪犯罪が多発しています。日本国民を苦しめる米軍への「思いやり」に道理はありません。

 米軍人の遊興費まで「思いやり予算」で負担しているのにはあいた口がふさがりません。米兵が飲食する施設のバーテンダーや宴会係、ゴルフ練習場係の経費まで負担しています。さらに、日本共産党の井上哲士参議院議員の追及で、米兵のディズニーランド旅行などのレジャーのさいの観光バスの有料道路料金まで負担していることもあきらかになりました。とんでもない話です。

基地なくすためにも

 国民にとり百害あって一利もない米軍のための「思いやり予算」は許せません。特別協定「改正」案は廃案しかありません。「思いやり予算」は、四万人もの米軍を日本に引き止める役割を果たしています。アメリカは「日本で米軍を維持する方が安上がり」といっています。

 米軍基地をなくし平和な日本をつくるためにも、「思いやり予算」は全廃させなければなりません。



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