2008年4月21日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

貧困ともに打開


 「構造改革」「新自由主義」のかけごえのもとで、社会保障制度や雇用が破壊され、貧困と格差がますます広がっています。「人間が人間として生きられるように」―生活困窮者とともにすすめる貧困打開の取り組みを紹介します。


連帯きずく相談所

「もう少し生きていいんですね」

さいたま

 「この人の言うことは信じられると思った」と、三十一歳の男性が事務所を訪ねてきました。「この人」と彼が呼ぶのは、地域の日本共産党の支部で活動している党員のことです。

 近所の居酒屋で何度か顔をあわせるうちに、親しく言葉を交わすようになり、「お酒の飲み方が荒れている」と、本気でしかられたと言います。

10代から働いて

 この党員から私に、相談にのってほしい青年がいると電話がかかってきたのは、四月十三日。翌日の晩、相談所ではじめて彼に会いました。彼は、建設職人として十代から働いてきました。働いた日数で給料が決まる職業の彼にとって、仕事の激減は即、生活の不安定につながります。三月も半月は働けませんでした。

 国民健康保険税が払えなくなり、保険証が区役所の窓口交付となって、郵送されなくなってから三年。ぜんそくの持病を持っていますが、病院に処方せんだけ書いてもらい、全額自己負担で薬だけ買っていました。

 消費者金融からの借金もかさみ、家に一人でいると不安でたまらなくなり、パチンコ通いがやめられなくなります。「借金があるのに、バカみたいですよね」と必死で笑顔をつくります。

 多くの相談者の具体的な相談事、多重債務の解決や国保証の交付は、あまり難しい仕事ではありません。一番難しいこと、大切なことは、自分をあきらめずに自分の弱さと向き合い、生活を立て直していくことだと、私は感じています。

 そして、それは、誰にとっても、一人ぼっちではできないことです。彼も、「本当の事が話せる友達はいない」「本気で笑うこともしばらくない」と話しました。

口伝えで広がる

 私が南浦和駅の近くに生活相談所を開いて十二年たちますが、「お茶当番」や「相談員」として、地域支部の党員の力を借りて、相談所を運営しています。支部の協力や、地域で支える態勢をつくらずには、相談事の本当の解決は図れないと考えているからです。

 毎週火曜日の午後二時から五時までの定例相談日には、全戸配布の党市議団ニュースを読んだ方や、党員や後援会員の紹介、口伝えに広がる情報を頼りに、毎週五―十人前後の方が訪れます。

 月四万円の年金と、わずかな貯蓄から月々三万円を取り崩しながら生きてきた、七十代の相談者に、生活保護の申請を終えた帰り道、「時間があったら一緒におそばでも食べて帰りませんか」と誘われました。何年かぶりに外食をされたというその女性は、「これで、もう少し生きていていいんですね」とおっしゃいました。

 「人間が人間として尊重される社会を」「人間らしいあたたかい連帯に満ちた地域を」、この思いは、生活相談所全員の思いです。(さいたま市議 斉藤まき)

47人が生活保護受給

路上生活者に声をかけ

福島市

 福島市生活と健康を守る会は、二〇〇五年十月から月一回、路上生活者支援活動を続けています。一月にテレビと新聞が報道したこともあり、支援の輪は大きく広がりました。

 「自分も何かできないか」と高校生や大学生、民医連の職員など支援活動に参加。路上生活を抜け出して生健会に入った人なども加わって、毎回夜九時から始まる「夜回り」の支援活動には二十人を大きく超える人が参加しています。

 生健会が支援を始めたきっかけは、会津大学短期大学部の下村幸仁教授からの呼びかけでした。

 市生健会の安田稲子事務局長は、「路上生活者が多くいることは知っていたが、それまでは、足が踏み出せなかった」と当時を振り返ります。

チラシを持って

 生健会では、「あなたも生活保護が受けられます。相談においでください」とのチラシをつくり下村教授と同ゼミの学生たちと路上生活者を訪ねました。最初の行動の直後の〇五年十月二十五日、五十一歳の男性が生活保護が受けられることに。それから二年半で四十七人が生活保護を受給することになりました。

 安田氏は、「一番の苦労は、住む場所を探すこと。これまでは、理解のある不動産所有者の協力をお願いし、アパートが確保されてきたがそれも限界がある」と話します。

 県生連の弦弓高明(つるゆみ・たかはる)事務局長は、下村教授と最初から支援活動を続けてきました。

 弦弓氏は、「社会の矛盾が集中しているのが路上生活者。私たちは、その人の過去は見ない。路上生活から抜け出したいと決意した人を応援してきた」と振り返り、「本人が決意しても、市は『住所が決まらなければ生活保護は受けられない』という態度。市営住宅には空きがある。希望者に貸すべきだと要求しているがなかなか進まない」と問題点を語ります。

行政の援助こそ

 日本共産党の村山国子市議も支援活動に参加しています。村山市議は三月議会で「福島市はホームレスの自立支援法にふさわしい対応をしているか」と質問。JR福島駅周辺の地下歩道などに「寝泊りを禁ず」と張り紙を出していることを取り上げ、「路上生活者を排除はしているが、相談先も書いておらず、支援する姿勢が見られない」と厳しく指摘しました。

 前出の安田事務局長は、「路上生活を抜け出したいと願っても住む場所が見つからず、『しばらくは路上生活をして』と言わなければならないのが一番つらい。県や市の何らかの援助がどうしても必要だ」と話します。(福島県・佐藤秀樹)


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