2008年4月21日(月)「しんぶん赤旗」
英で最低課税帯廃止の動き
低所得者 負担増に
与党が懸念
【ロンドン=岡崎衆史】英与党労働党内やその支持基盤の労働組合で、所得税の最低課税帯を廃止するという政府の方針に対し、低所得者の負担増につながり税の逆進性が強まるとして、懸念が広がっています。
閣僚、閣外相付きの六人の議会秘書官(労働党下院議員)が十九日までに、最低課税帯廃止に懸念を表明し低所得者への配慮を求めました。議会秘書官には政府方針に沿った行動が義務付けられるため、政府方針に公然と懸念や異論を表明するのは異例です。
議会秘書官らは、「貧しい人をより貧しくすべきではない」「人々の声を聞き、将来的には不均衡を是正しなければならない」と新聞紙上で発言。また、ブラウン首相に懸念を伝えました。なかには一時、秘書官辞任の意向を同僚にもらしたケースも報じられました。
また、最低課税帯廃止を懸念する下院動議(労働党議員が呼びかけ)には、これまで六十八人が賛成。うち四十三人が労働党議員です。
与党労働党の強力な支持団体、労働組合会議(TUC、五十九団体、約六百五十万人が加盟)のバーバー書記長は十二日、リバプールで演説し、「超大金持ちの多くが公平な税負担をしていないことが明らかになっている。低所得者が増税に怒るのは当然だ」と述べ、所得税の逆進性が増していることに警鐘を鳴らしました。
最低課税帯 二〇〇七―〇八年予算年度までは、基礎控除を差し引いた後の年間所得の大きさに応じて、下から、税率10%、22%、40%の三段階の課税帯を設置。政府は昨年三月、〇八―〇九年から、10%の最低課税帯を廃止し、20%、40%の二段階の課税帯のみとすると発表していました。今月七日発表の下院財務特別委員会の報告は、課税帯の変更で、年収一万八千五百ポンド(約三百八十万円)未満の子どものいない単身者が最大二百三十二ポンド(約四万八千円)の負担増になる可能性を指摘しています。