2008年4月21日(月)「しんぶん赤旗」
米韓首脳会談
「北」は完全核申告を
6カ国協議の努力で一致
【ワシントン=鎌塚由美】ブッシュ米大統領と韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は十九日、ワシントン近郊のキャンプデービッドで首脳会談を行い、北朝鮮に対して、核開発活動の「検証可能な完全な申告」を求める姿勢を確認しました。また北朝鮮の核問題解決には、六カ国協議が最も効果的だとの認識で一致。六カ国協議で引き続き協力することを確認しました。
会談後の記者会見で、李大統領は「韓国と米国は、北朝鮮へのいかなる敵対的意図も抱いておらず、北朝鮮が国際的な孤立から抜け出し、北朝鮮住民の生活を改善するために努力することで一致した」と語りました。
北朝鮮の核放棄の第二段階を完了させるために必要な「核計画の完全な申告」が遅れていることについて、李大統領は「北朝鮮を相手にする際は忍耐と時間が必要だ」と指摘、「核放棄は困難だが決して不可能ではないと確信している」と強調しました。
ブッシュ大統領は、北朝鮮は核計画と拡散活動を検証できるかたちですべて申告すべきだと表明。「申告が検証可能なものかどうかをみて米国の立場を決める」とのべ、核の申告問題で安易な妥協はしないと強調しました。ブッシュ氏は、テロ支援国指定の解除など米側の見返り措置をいつおこなうかなど、履行については明言しませんでした。
解説
対北同盟 変化の兆し
ブッシュ米大統領と李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領が合意した「二十一世紀の戦略的同盟」は、「韓米関係が軍事・安保分野にとどまらず、経済・社会・文化分野はもちろん、世界的な分野で協力を増進することを意味する」(李東官〈イ・ドングァン〉韓国大統領府スポークスマン)とされています。
米韓同盟はこれまで、米韓相互防衛条約に基づいて「北朝鮮から韓国を防衛」することを主眼に置いてきました。二〇〇三年にイラク派兵を決めた際、当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は「世界秩序は力ではなく大義名分によって動かさなければならない」と事実上、イラク戦争に異議を唱えながら、米韓相互防衛条約に基づく「同盟の道理を尊重する」と派兵の理由を説明しました。
一方、李大統領は十五日にニューヨークで講演し、「東アジア地域と全世界的なレベルで戦略的利益を共有する」と言明、戦略的同盟の目指す方向を「価値同盟、信頼同盟、平和構築同盟の三大目標」だと表明しました。
世界的な利益の共有分野としては、「テロ、環境汚染、飢餓」などを列挙。地域での具体的な協力としては、「米韓が北東アジアの多国間安保協力の構築を先導する」「米韓自由貿易協定(FTA)によって韓国市場を米国が東アジアでの市場を拡大するための戦略的な橋頭堡(きょうとうほ)をつくる」ことなどを挙げました。
「二十一世紀の戦略的同盟」の包括的ビジョンは、夏に予定されるブッシュ大統領の訪韓時に明らかにされることになっています。
北朝鮮の核問題に関しては、李大統領はこれまで強調してきた「原則は守るが対応は柔軟に」との姿勢を示しました。
李大統領は対北朝鮮政策で、人権問題など「世界の普遍的な価値」を適用するとの原則を明らかにしてきましたが、十九日の共同記者会見では、核計画申告の遅れについて「北朝鮮社会をよく理解すれば、遅れが生じて時間がかかることが分かるだろう」と理解を示し、「今は非常に大事な時期だ。各メディアも北朝鮮が申告を誠実にできるよう、いい雰囲気をつくってほしい」と訴えました。
訪米中にソウルと平壌に相互の連絡事務所を置くことを提案。共同記者会見では、南北首脳会談について「今すぐやろうというのではない」としながら、「核廃棄と南北和解の維持」に必要なら何度でも会えるとの姿勢を強調しました。(面川誠)
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