2008年4月18日(金)「しんぶん赤旗」

主張

ハンセン病基本法

元患者の「最後の」たたかい


 ハンセン病元患者が国を相手に最後のたたかいに挑んでいます。「ハンセン病問題基本法」を制定し、全国十三の国立療養所を社会に開かれた医療施設にしようというものです。

療養所設立から百年

 ハンセン病療養所は、元患者にとって国の手で家族や社会から強制的に隔離された場所です。その療養所のうち五つが、来年で設立百年を迎えます。入所者の平均年齢は八十歳になろうとしています。療養所の社会化をとの願いは、元患者にとって隔離から解放されることであり、体の奥底からの叫びです。

 ハンセン病は感染力の弱い病気です。よほど抵抗力が衰えない限り発症しません。戦前から戦後多く発症したのは、貧困と戦争による飢餓が原因でした。貧困・戦争病といわれるゆえんです。戦後は、治療薬の開発によって治るようになりました。

 現在の入所者は、全国で二千七百六十人余です。ハンセン病自体はすでに完治。後遺症による視力や手足の障害、高齢からくる病気も加わり医療や介護を必要としています。

 日本政府のハンセン病対策は一九〇七年の「癩(らい)予防ニ関スル件」、一六年の「癩予防法」の制定に始まります。それは、患者を療養所に強制隔離し、死を待つことにありました。結婚を望む男性には断種手術を強い、女性が妊娠すると堕胎させました。絶滅政策です。

 この隔離政策は、九六年の「らい予防法」廃止まで続きます。同法の廃止によっても、入所者の社会復帰は進みませんでした。隔離・絶滅政策によって入所者には、帰るふるさとや家族がありませんでした。

 政府がハンセン病対策の誤りを認め、元患者に謝罪したのは二〇〇一年、国家賠償訴訟・熊本地裁判決の敗訴を受けた後でした。そのさい、元患者にたいして「在園を希望する場合、終生の在園を保障し、社会の中で生活するのとそん色のない生活環境と医療の整備をおこなう」と約束しました。

 ところが国は、この約束をほごにしようとしています。療養所の機能は、入所者の減少とともに低下する一方です。療養所を地域に開放し、各療養所の特徴を生かした医療・介護施設にしようとの元患者・入所者の提案についても国は拒否しています。廃止法二条の「療養所は現に入所しているものに対して、必要な治療をおこなう」との規定をたてにしています。

 基本法の制定は、国の姿勢をただし、国に元患者との約束を守らせようというものです。ハンセン病問題に関する施策の基本を定め、国、地方公共団体の責務を明らかにし、甚大な被害について可能な回復を図ることを基本理念にしています。

 基本法は、入所者が社会の中で生活するのとかわりない生活、医療水準を確保し、地域社会から孤立しないようにすることを義務付けています。このために療養所の土地、設備を自治体、地域住民が利用できるよう措置するなどを明記しています。

元患者の叫び

 基本法制定に賛同する署名は大きく広がり、六十二万を超えました。療養所の地元自治体も賛同しています。超党派の国会議員でつくる二つの議員懇談会も議員立法として今国会に提出し、成立をはかることを入所者代表に約束しています。

 元患者の、「国は私たちが死にたえるのを待っているのではないか。死んでたまるか。療養所を地域に開かれた施設として未来に残す。私たちの生きた証しです」の声に、応えるときです。


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