2008年4月17日(木)「しんぶん赤旗」
主張
命縮める制度
知れば知るほど廃止しかない
「自分と家族はどうなるのか」「なぜ年金がこんなに少なくなっているのか」
後期高齢者医療制度がスタートし、一回目の保険料の年金天引きが実施されました。役所に問い合わせや抗議が殺到しています。保険料の算定ミスが相次ぐなど、見切り発車による大混乱も起きています。
福田康夫首相は「説明不足は、まずかったと反省している」とのべました。「まずかった」のは説明不足よりも制度の強行そのものです。
こんな制度を誰が
後期高齢者医療制度は七十五歳という年齢を重ねただけで別枠の制度にお年よりを囲い込み、医療費削減の標的にする差別医療制度です。
今月から天引きが始まったのは、千三百万人の加入者のうち八百万人です。一部の自治体や、健保の扶養家族だった人など一部凍結の対象になっているお年よりの天引きは十月からです。
政府は世帯の全員が国保に加入している六十五歳から七十四歳のお年よりにも天引きを強制し、十五日には、その一部が実施されました。
生活必需品が値上がりし、税金や社会保険料がどんどん重くなっています。一方で年金は、これまでの物価スライドで減少しています。多くのお年よりは、いや応なく暮らしを切り詰めてきました。
非課税措置がある税金とは違って後期高齢者医療の保険料は全員が払わなくてはなりません。わずか月一万五千円の年金から、介護保険料に加えて医療保険料まで天引きすることは、お年よりの命をおびやかすやり方です。
年金が月一万五千円に満たないお年よりからは天引きはしません。しかし、滞納が続くと保険証を取り上げられて、窓口で医療費全額を払わなければならなくなります。これまでの老人保健制度では、病気がちなお年よりの特性に配慮して、決してやらなかった冷酷な仕打ちです。
こんな血も涙もない制度をつくったのは誰か、はっきりさせておく必要があります。
「審議も機が熟してきた」「ぜひこの法案について処理を進めるべきだ」。二〇〇六年五月十七日、後期高齢者医療制度など医療法案を審議していた衆院の厚生労働委員会で、公明党の福島豊議員が審議の打ち切りを求めました。徹底審議と廃案を求めて数百人が国会前に詰めかけ、あふれんばかりの傍聴者が注視し、日本共産党など野党が厳しく抗議する中で、審議は打ち切られました。自民党と公明党が、後期高齢者医療制度を強行採決した瞬間です。
自公は参院でも強行採決を繰り返し、小泉内閣が提案した後期高齢者医療制度を含む医療改悪法は六月十四日に成立しました。
狙い撃ちの差別医療
差別的な高齢者医療は財界と政府・与党の合作です。小泉内閣の時の二〇〇一年秋、経済財政諮問会議で厚労省が高齢者狙い撃ちの医療費抑制策を打ち出しました。これに対し、日本経団連会長の奥田碩トヨタ自動車会長(当時)が「新しい高齢者医療制度の創設を含めて抜本改革が必要だ。早急に改革案を提示願いたい」と迫りました。それに応え、公明党の坂口力厚労相(当時)が「後期高齢者に着目した保険制度の創設」の試案をまとめました。
よってたかってお年よりを狙い撃ちにする差別医療制度をつくり、強行採決で成立させた罪は重大です。お年よりの命を縮める後期高齢者医療制度は直ちに廃止すべきです。