2008年4月16日(水)「しんぶん赤旗」
倫理検証委
市民の知る権利阻害
「光市母子殺害」放送 NHKなどに意見
BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は十五日、山口県「光市母子殺害事件」の差し戻し控訴審を報じたテレビ番組について、「被告・弁護団」対「被害者遺族」という対立構図を感情的に描き、「視聴者の知る権利を大きく阻害する」とした意見を発表しました。NHKと在京民放キー五局に意見を手渡し、自主的な検証と報告を求めました。
同委員会は、二〇〇七年に放送された光市事件関連の三十三番組(八放送局)を検証し、番組制作スタッフから聞き取り調査を行ってきました。
意見では、「集団的過剰同調番組」とも呼ぶべき横並びな番組づくりに憂慮を表明。裁判制度に照らして見るとき、その際立った特徴として(1)被告と弁護団に対する反発や批判の激しさ(2)弁護団が法廷を勝手に動かしているイメージを強調するなど、裁判所や検察官の存在の極端な軽視があるとのべています。
「背景に、番組制作者に刑事裁判の仕組みについての認識が欠けていた」と指摘しました。
また、被告人の報じ方についても「断片的で一面的」であるうえ、スタジオの司会者やコメンテーターが「被告・弁護団を強く非難し、被害者・遺族に同情・共感を示す―その繰り返しが基本になっている」と批判。「公正性・正確性・公平性の原則を十分に満たさない番組は、視聴者の事実理解や認識、思考や行動にもストレートに影響する」と警告しています。
記者会見で川端委員長は「来年の五月に一般市民が参加する裁判員制度が始まるが、もし、テレビが不当な影響を与え、誤った裁判が行われれば重大な問題になる。これを機会に、自局の番組をよく検討してほしい」と語りました。