2008年4月16日(水)「しんぶん赤旗」

主張

世界の食料危機

日本がすべきことは多い


 穀物をはじめ食料の価格が世界的に異常な高騰ぶりを示しています。途上国では各地で食料が入手困難となり、暴動まで起きています。途上国への緊急援助の要請に応えるべきです。同時に、混乱の大きな原因である投機を規制する必要があります。食料を市場まかせにせず、各国の食料主権を確立することが必要です。世界最大の食料輸入国である日本にとっては、農業を再生し、食料自給率を引き上げることが重要です。

深刻化する社会不安

 食料の不足や価格高騰によって、多くの途上国が社会的危機に直面しています。三月以来、中東のエジプト、アフリカのカメルーン、コートジボワール、セネガル、ブルキナファソ、エチオピア、マダガスカル、アジアのインドネシア、フィリピン、バングラデシュ、カリブ海のハイチなどで暴動が起きました。ハイチでは五人が死亡しています。

 世界の三十七カ国もが食料危機に直面しているとされ、国連食糧農業機関(FAO)、国連世界食糧計画(WFP)、世界銀行などが援助を要請しています。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は十四日、食料危機の緊急性を指摘し、緊急援助と長期的対策の必要を強調しました。日本も積極的に貢献すべきです。

 数年来の穀物価格の上昇ぶりはまさに異常です。過去一年で小麦は130%、トウモロコシは31%、大豆は87%上昇しました。コメも二倍に跳ね上がっています。食料の増産には時間がかかることから、当分は高値が続くとみられています。

 価格高騰の原因は重層的です。グローバルな気象変動との関係も指摘されるオーストラリアなど主要生産国での干ばつや洪水などの悪天候が影響しています。構造的な要因もあります。中国などの国々で、所得上昇に伴って肉の消費が増え、家畜のエサとなる穀物の消費が大きく増えています。また、トウモロコシなどは、米国がバイオ燃料の生産に振り向けています。

 従来コメの主要輸出国だったベトナムやインドなどが、国内のインフレ抑制のために輸出を制限するようになったことも響いています。

 一方、急激な価格上昇には投機資金の暗躍があることにも目を向けなければなりません。米国での不動産バブルの崩壊とそれに伴うサブプライム・ローン(信用力の低い層向けの住宅ローン)破たんが引き起こした株価の下落で、投機資金が穀物市場を荒らし回っています。ヘッジファンドや背後にいる大手金融機関の責任が問われなければなりません。

 今夏の洞爺湖サミットでは食料問題も論議される見通しです。ドイツのハイリゲンダムで昨年開かれたサミットでは、投機マネーの規制が議論されたものの、日本や米国などの抵抗で規制実現にはいたりませんでした。日本はサミット議長国として、援助とともに投機規制の実現にも積極的な役割を果たすべきです。

食料自給率の向上を

 日本の食料自給率は40%を切り、先進国中で最低です。日本共産党は三月に発表した「農業再生プラン」で、食料は「外国から買えばいい」という現在の農政を転換し、食料自給率の向上を「国政の重要課題にすえる」よう呼びかけています。日本での国内農業の再生は、食料不足に苦しむ国々への連帯にも通じる道です。とりわけ、本来はコメを自給できるにもかかわらず、「食料主権」を放棄し年間七十七万トンものミニマムアクセス米を輸入していることは、ただちに中止すべきです。


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