2008年4月12日(土)「しんぶん赤旗」
主張
米原子力空母
恒久的な母港化を許さない
神奈川県横須賀市の市民団体は十一日、原子力空母の配備を問う住民投票条例の制定を求めて、五万筆を超す署名を横須賀市選挙管理委員会に提出しました。署名数は昨年より一万筆も上回りました。市長に住民投票条例の市議会への提案を求めることになります。
一方、この横須賀市民の原子力空母母港化の反対運動に背を向けるかのように、米原子力空母ジョージ・ワシントン(排水量約十万トン)は七日、米バージニア州ノーフォーク基地を出港しました。八月十九日に横須賀基地に到着する計画です。横須賀市民の配備反対運動に挑戦するものとしか思えません。
付きまとう核事故
横須賀市民がつくる「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」が住民投票条例の制定を求めるのは、住民投票で原子力空母配備の是非について、市民が意思を表明できる機会をつくるためです。
原子力空母の母港化は、横須賀四十二万市民をふくむ首都圏三千万人を核事故の危険にさらします。米政府は、原子力艦船が一度も核事故をおこしていないと大うそをついていますが、ジョージ・ワシントンと同型のニミッツもステニスも、一次冷却水漏出や原子炉緊急停止という「あわや大惨事」の一歩手前の大事故をおこしています。
核事故の危険と共存できるはずはありません。いつ、核事故にまきこまれるかを毎日心配して暮らすような生活は、憲法が保障する平和的生存権とは無縁です。原子力空母の母港化に反対するのは、市民として当然です。
通常型空母キティホークのために延長工事した横須賀基地の十二号バースをジョージ・ワシントンが使うには、使用目的の変更が必要です。住民投票での審判を力に、国の使用目的変更の要請を市長に拒否させるなら、配備決定をくつがえすことも可能です。
横須賀基地を原子力空母の母港にするということは、横須賀基地の世界各地への“殴り込み”能力を格段に強化することにもなります。重油を燃料にするキティホークは四日ごとに給油しなければなりません。原子力を推進力にする原子力空母は、二十五年間連続運航できます。重い重油を積む必要がないので、その分、艦載機用の航空燃料や武器・弾薬を積むことができます。
ジョージ・ワシントンの横須賀母港化は、世界のどこであれ迅速に展開して、米軍がアメリカの意に逆らう諸国をおびやかす先制攻撃能力を飛躍的に高めます。憲法で戦争放棄を明記した日本が、米軍の先制攻撃戦争を助長する役割を担うなど断じて許されることではありません。
しかも、日米両政府は原子力空母の配備を機会に、横須賀基地を米空母の恒久的な母港にすることをねらっています。そうなれば多数の米兵の駐留も恒久化し、タクシー運転手殺害事件などの米軍犯罪がいつまでも根絶できません。とうてい認めるわけにはいきません。
非核・平和のために
広島、長崎への原爆投下は日本の戦後政治の原点です。原子爆弾の爆発による直接の犠牲にとどまらず、放射能によるがんをはじめ終生にわたる苦しみを被爆者に与え続けています。核兵器持ち込みはもちろん、放射能事故を伴う原子力艦船の配備に反対するのが道理です。
非核・平和の願いに反する原子力空母の配備をやめさせ、空母の母港化を返上させることが重要です。
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